最新記事ヘッドライン

Loading...

2008/12/27

このエントリーをブックマークに追加 このエントリをlivedoorクリップに追加 Yahoo!ブックマークに登録

まるで我が家のような図書館:クリントン・マコーム公共図書館現地レポート

ピッツバーグから車を5時間半走らせ、デトロイト近郊のクリントン・マコーム公共図書館に来ました。2003年に開館した新しい図書館で、ゲーム大会の開催などで日本にもちょっと名前が聞こえたことのある図書館です。クリントン・タウンシップは滋賀県野洲市と姉妹都市で。人口も増加傾向にあり、ミシガン州のタウンシップの中では一番大きなもので市への昇格も見込まれているようで、このあたり、やはり姉妹都市だけあって、2004年に市になった野洲にどこか似ています。

それにしてもラブリーな図書館でした。

詳細はこちらから。

Clinton-Macomb Public Library
http://www.cmpl.org/
 



まるで我が家のような図書館


クリントン・マコーム公共図書館は、”Heart of the Community: The Libraries We Love”という本の中で「ハイテクなまるで我が家のような図書館」と紹介されています。このフレーズはまさにこの図書館にぴったりの表現で、本物の火をつかっている暖炉、おもちゃであふれた子供部屋、大画面液晶テレビで映画を楽しめるヤングアダルトコーナー、無線のインターネットが使える書斎のような学習スペース、豊富な音楽、映画、ゲームなどのコレクション、などなど、図書館のあちこちのコーナーがちょっとリッチで幸せな北米の家のような空間をかもし出していました。

暖炉のある大衆雑誌コーナー。火は本物。ぽかぽか暖かくてねちゃいそう。


ヤングアダルトコーナー。ネオンがナイス。


児童コーナー。馬車だの飛行機だのいろいろ。
 

豊富なDVDコレクション。難しいドキュメンタリーではなくもむしろポピュラーな大衆もの中心。


子供連れで来館していたお父さんとたまたま話はじめたところ、このご家族はこの図書館から歩いてすぐのところに住んでいるとのことで、「それはラッキーですねー」というと「ぜったいラッキーだね。こどもをつれてよくくるよ。いい時間をすごせるとてもいい場所だね。」とにこにこしながら語ってくれました。今日は年末でお客さんはとても少ないとのことですが、それでも広い館内にはたくさんの人がゆったりと時間をすごしていました。

ライブラリーショップ


1階の奥まで行くと、そこには、とてもとても可愛らしいライブラリーショップが小部屋の中に入っていました。入り口の脇のガラスのショーケースのディスプレイはとても繊細で、塵ひとつなくきれいにされて、きらきらしていました。中に入っていくと、女性が2人カウンターの奥のほうで「クリスマスに焼いたケーキがおいしかったの、レシピはね、、」と楽しげに笑いながらおしゃべりしていました。この人たちはボランティアかなと思い話かけると、やはりボランティアだそう。ライブラリーショップは商品のセレクトから店番まですべてボランティアで運営されているそうで、このショップだけでもボランティアが40人ほどいるとのことでした。なにか報酬はあるのか聞いたところ、まったくなしで、ピュアにこの図書館が大好きでお手伝いしているのだとのこと。確かにここに来てにぎやかに同じ町の人とおしゃべりしながら2,3時間の時間を過ごせたらとても幸せだと、妙に説得力がありました。

ライブラリーショップ入り口。


4冊で1ドルの古本。リボンを結んで素敵なディブプレイの一品に。


ところ狭しと置かれた品々。


子供を守るポリシー/子供本位のサービス


2階にいくと、コンピュータールームがあり、入り口に18歳以上の表示がありました。大人用のコンピュータであることをむしろ強調するのはフィルタリングソフトとの関係かなと思い、レファレンスカウンターにいたライブラリアンにたずねると、やはりそうだとのこと。フロアにあるコンピュータは基本的にフィルタリングソフトが入っていて子どもも大人も混じって利用し、コンピュータルームの中のコンピュータはフィルタリングなしでどんなコンテンツでもアクセスできるようにしているそうです。

18歳以上立ち入り可の張り紙。


今回の図書館見学にあたり、このあたりの図書館のウェブサイトを見ると、図書館では○歳以下の子供たちは親と同伴でなくてはいけないというポリシーが見られ、少々不思議に思っていました。このことを聞いてみたところ、この図書館には公共の交通機関でのアクセスがなく、しかも目の前には広大な墓地があるため、歩いてこれる人の数は限られていて、交通の便のない子供たちが徒歩や自転車で通うのは少々危険が伴うそうです。実際私も車で走っていて、こんなところにあるのでは子供の来館は大変だなと思いながらここまできました。広大なアメリカならではの事情で、このポリシーにはこんな理由があったのかとと感じました。

およそ300本あるゲームコレクションもさることながら、児童用の本やオーディオブック、教育コンテンツの充実ぶりは目を見張るものがありました。児童コーナーで面白かったのはパペットコーナーで、たくさんのパペットが置いてありました。このパペットコーナーには時にはプロの人を招いたイベントをすることもありますが、多くは子供たちが自由に遊んでいるそうでした。私がいる間にも子供たちがやってきて、パペットと戯れていました。実はこのパペットたち、貸出可で、ひっくりかえすときちんとバーコードが着いています。家でお母さんお父さんの前で披露したり、お部屋でこっそり練習したりするそうで、返却されるとお菓子やジュースでよごれてしまっているのでドライクリーニングに直行ということもよくあるそうです。





2階のフロアは、左周りにまわると、鉄道模型が動き出すエントランスから始まり、小さい子供たちのコーナー、ティーンコーナー、ヤングアダルトのビジュアルコンテンツのコーナー、レファレンス、ビジネス資料のコーナーと、年齢が徐々に上がっていくフロアプランになっていました。なんだか、子供の成長を見守っていくという姿勢が、フロアプランからも感じられるようでした。

ドライブスルーと返却資料仕分けシステム


車でのアクセスがほとんどのこの図書館、外に回るとなんとドライブスルーがありました。近くに寄ってみてポストを見てみると、なんと「24 hour pickup / 24 hour return」の文字。これはさすがに怪しいとおもい聞いてみると、「当初はそういう計画があったみたいだけど~」と苦々しげに笑われてしまいました。





この返却ポストの内側には、返却資料を自動的に仕分けするシステムがあります。分類別に箱に振り分けてくれるというもので、これはなかなか図書館員に優しいシステムです。このコーナー、休憩コーナーの一角からガラス越しに見れるようになっていて、中で仕分けシステムと人が働く様子がとてもよく見え、私もついつい時間をすごしてしまいました。



その他の写真のスライドショー




出会いと感想


2階のレファレンスカウンターでお話をしたマリアーナさんは、「この町は日本の町と姉妹提携しているのよ。ヤス。しってる?」と、クリントン・タウンシップが野洲市と姉妹都市であることをきっかけに、図書館のこと、町のこと、とても親切にいろいろなことを話してくださいました。その上、「あそこはみた?ここは?」と館内中を案内してくださいました。イタリア系の方で、もとはデトロイト公共図書館の多言語のコレクションを長く担当されていたベテラン司書さんで、プロだ!と思わせる方でした。

まるで我が家のような図書館は、建物の設計のすばらしさもさることながら、それを利用する町の人と、ボランティアと、素敵なライブラリアンに支えられたあたたかい図書館でした。野洲市はいいところと姉妹提携をしましたね。

参考
Video game events at libraries draw crowds of teens
Posted by The Associated Press February 18, 2008 07:31AM
http://blog.mlive.com/michigan/2008/02/video_game_events_at_libraries.html

2008/12/26

このエントリーをブックマークに追加 このエントリをlivedoorクリップに追加 Yahoo!ブックマークに登録

本からインスピレーション:ニューヨーク公共図書館の蔵書で新しいデザインを産み出す

本はいろいろなデザインのインスピレーションを与えてくれるものですが、ニューヨークで活躍するアーティストが、ニューヨーク公共図書館の本を使って新しい作品を作り出す、という企画が行われています。この企画は、ニューヨーク公共図書館のレファレンスライブラリアンと、ニューヨークの様々なデザインを紹介しているウェブサイトDesign *Spongeが協同しておこなっているものです。

詳細はこちらから。

video debut: design by the book!
http://www.designspongeonline.com/2008/11/video-debut-design-by-the-book.html

この企画に参加しているのは、Moontree LetterpressのRebecca Kutysさん、John Pomp GlassのJohn Pompさん、Julia RothmanMike Perryさん、Lorena Barrezuetaさんの5人のアーティストです。5人がニューヨーク公共図書館の蔵書からインスピレーションを得て新しいデザインを産み出していく模様を、ドキュメンタリーシリーズとしてインターネット(のみ)で放映しています。今のところ第2話まで見ることができます。
 
エピソード1では、Design *SpongeのライターであるGrace Bonneyさんがレポーターになり、この5人のアーティストを紹介しています。



エピソード2では、5人のアーティストがニューヨーク公共図書館のレファレンスライブラリアンJessica Pigzaさんに会い、彼女の紹介で、インスピレーションを与えてくれそうな本たちに出合っていきます。


 
このエントリーをブックマークに追加 このエントリをlivedoorクリップに追加 Yahoo!ブックマークに登録

お金のない弱小図書館のための無料Web2.0サービス活用のススメ

お金がなくてもいいサービスはしたいししなくちゃならない。米国の公共図書館もなかなか大変ですが、シリコンバレーのサン・ノゼ公共図書館の図書館員でLibrarianInBlackのブロガーであるSarah Houghton-Jan氏が、資金力のない小さめの図書館が使える無料のWeb2.0サービスについてのプレゼンテーションファイルを公開しています。

詳細はこちらから。

"Web 2.0 Services for Smaller, Underfunded Libraries" (PDF - 2.67MB)
http://librarianinblack.typepad.com/files/web20servicesforsmallerunderfundedlibraries---canedinstitute2008.pdf

物理的な図書館の利用者は、少しずつしか増えていないのに対し、デジタルな図書館の利用者は劇的に増えており、
将来はこうなるので、
図書館はもっとオンラインサービスにフォーカスしていかなくてはならないそうで、Sarahさんおススメの、「ほぼどこの図書館でもできる」、ウェブ上でのプレゼンスを高める20のステップを紹介しています。宣言どおり、とくに目新しいものはないですが、具体的な優良実践事例のリストがあり、わかりやすいプレゼンファイルになっています。

レファレンスサービス


無料の同期型デジタルレファレンスとしてすっかり定着したIMレファレンスも、相変わらず利用拡大にむけて努力がつづけられており、Meeboのウジェットを図書館ウェブサイトに貼り付けてたり、高機能なTrillian Astraを使ったり、またスカイプを使ったビデオチャット(オハイオ州立大学図書館)などが始まっていることが紹介されています。(Googleのビデオチャットはまだ紹介されていませんが、どこかでもう使用事例はあるのでしょうか。)

Meeboのウィジェットの導入事例:Topeka & Shawnee County Public Library(画面右カラム真ん中あたりにウィジェットが貼り付けられています。MeeboではGoogle TalkやMSN、Facebookなどをまとめて管理できるので、利用者がどのようなチャットソフトを使っていてもIMレファレンスを提供することができます。)
 

 

延滞防止のためのアラートサービス


日本ではあまり知られていないですが、Library Elfというサービスがあります。図書館の利用者の中には、家族で何十冊もの本を借りている方もいますし、また自宅近くの公共図書館、勤務先のある地区の図書館、大学図書館、など複数の図書館を利用していて大変なことになっている方もいます。Library Elfはそんな方におススメなサービスで、登録しておくと、図書館の返却期限が近づくとメールやRSSで知らせてくれるサービスです。督促作業の負担の軽減のために多くの図書館がこのサービスをサポートしています。
 

 
そのほか、ブログ、オンラインブッククラブ、SNS、画像共有サイト、動画共有サイトなど、”定番”が紹介されています。日本の図書館の場合、自治体のフィルタリングソフトのせいでネットのサービスに自由にアクセスできないなどというところもあるので、「ほぼどこの図書館でもできる」というのはあてはまらないかもしれませんが。
 
このエントリーをブックマークに追加 このエントリをlivedoorクリップに追加 Yahoo!ブックマークに登録

Ning上のライブラリアンブローガーのソーシャルネットワーク

Ningの話を情報学&イベント仲間に話したところ、意外とみんなつかったことがなくそれじゃぁ一度試してみようと、スキーのスケジュール管理&写真・動画共有&ネットワーキングの身内SNSを作って遊んでいます。さすが情報学の仲間、とくに留学生はみんな複数のSNSをうろうろしているので、こういうことに関しては適応能力がはやいですね。類は友を呼ぶ。

Ningを検索したところ、図書館員系のSNSもいくつかあり、中に、ライブラリアンでブログをやっている人のためのソーシャルネットワークというのもありました。

詳細はこちらから。

Librarian Bloggers : Librarians who Blog
http://librarianbloggers.ning.com/
"A space for all the people who are out there blogging about libraries, information science, and everything in between."

現在参加者は152人で、じわじわと増えているようです。米国のライブラリアンブロガーが中心です。活動が特に盛んというわけではないようですし、私にはブロガーがSNSでつながることの意味は良くわかりませんが、使えそうなものはなんでもつかってみることにこしたことはありません。たぶん。

このエントリーをブックマークに追加 このエントリをlivedoorクリップに追加 Yahoo!ブックマークに登録

図書館情報学大学院の図書館:無料コーヒーもある憩いの場

イリノイ大学アーバナ・シャンパーン校の図書館情報学大学院の図書館が、物理的な施設としての図書館を閉鎖することを検討しているというニュースが流れています。ピッツバーグ大学の図書館情報学図書館も、決して利用が多いとはいえないですが、それでも学生の憩いの場として重要な役割を果たしています。

詳細はこちらから。


(写真は公式ウェブサイトより)


(写真は公式ウェブサイトより)

図書館情報学大学院の入学式には、かならず図書館情報学図書館の代表を勤めるエリザベス・マホニー教授がやってきて、図書館をどんどん使ってねとアピールします。1年ほど前の私たちの入学式のときにも、マホニー教授がやってきて、「今日はぜったいこれだけは覚えて帰ってね。図書館は大学院の建物の3階にある。私の名前はエリザベス・マホニー。あなたたちの図書館だから、どんな目的でもいいからどんどん使ってね。」と、とても手短く、でも決して忘れられないほどのインパクトある説明をしていきました。

マホニー教授の方針で、常に図書館には無料のコーヒーが保温ポットにいれられていて、学生はいつでも自由に飲みにいけます。もちろん紙コップや砂糖・クリームも置かれているし、ときにはあめちゃんやりんごやビスケットが置かれていることもあります。入り口を入ってすぐのところのソファースペースでは、飲食もOKで、学生たちは、授業の待ち時間や、グループミーティングの合間にサンドイッチを食べたり、ドライフルーツや生にんじんをかじったりしています。建物の中に研究室のある博士課程の学生も、ふらっとここにきてコーヒーをとって出て行くすがたをよく見かけられます。

図書館情報学大学院は8階建てのビルで、主に授業が行われるのは4階、5階、8階。事務も5階にあり、3階は普段まったく通らない場所です。もしそこに居心地の良い憩いの場があることを知らなければ、入り口も小さく外からは見えにくく、多くの学生がまったく立ち寄らなくなりそうな図書館です。実際、電子ジャーナルの充実しているピッツバーグ大学では授業の資料もほぼオンラインで入手でき、紙媒体で必要なものはむしろ他分野の資料でありほかの図書館を利用するため、この図書館におかれている紙資料を利用する重要度はあまり高くないので、マホニー教授にもその危機感はあるようです。

ところがこの図書館は、いけば必ずというほどマホニー教授やフレンドリーな図書館情報学の院生バイトの司書がいて、入っていくと、「はーい」と声をかけてくれ、そして時には、「コーヒー、今入ったところだよ」などと教えてくれたりします。

図書館に、オンラインではなかなか見つけにくい資料があるのはもちろんのこと。学生はコーヒーを片手にふらりと書架にいき、何冊かの本や雑誌をピックアップし、ソファに寝転びそれを読む。そんな風景をみていると、居心地のよさが呼び水になって、学生は貴い資料に出会っていっているのだなと感じます。

私にとっては、京都で通った大学の司書課程資料室もこんな感じだったので、新鮮というよりは懐かしい感じです。学生が勉強にのめりこむのは、こういう空間との出会いがきっかけになったりするものだと、私は思っています。足元の物理的空間の重要性を感じることができずに図書館情報学大学院を卒業し図書館運営に関わっていく学生がいるとすれば、それはなんだか悲しいですね。

(写真追加予定)

参考:
E871 - 米国を代表する図書館情報学大学院の図書館,施設の閉鎖を検討(CA-E)
http://current.ndl.go.jp/e871