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2009/02/07

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図書館PR賞:2009年のジョン・コットン・ディーナ賞の受賞館

アメリカ図書館協会の主催する賞の中でももっとも注目される賞に、ジョン・コットン・ディーナ賞というものがあります。夏の読書プログラム、ファンドレイジング活動、設立100周年記念イベントなどなど、その年もっとも卓越したPR活動を行った図書館数館に贈られるもので、受賞館には、各種の媒体でレファレンス情報源を提供しているH.W.WilsonのH.W.Wilson基金から5000ドルが賞与されます。
 
毎年興味深い活動を垣間見ることができ、楽しみな賞ですが、今年も受賞館が発表されました。
 
詳細はこちらから。
 
John Cotton Dana Library Public Relations Award
http://www.hwwilson.com/jcdawards/jcdwin2009.htm

PRって?
私は、PR=広報活動という訳出に慣れてきていたので、どうしても図書館側からの一方的な宣伝活動というイメージで考えていたのですが、PR(Public Relation)は、利用者である市民との関係構築のことであり、双方向的な意味合いが強くあります。実際、受賞館をみても、宣伝に長けていることもさることながら、市民と実質的な関係を築くことに成功した図書館が受賞されています。
 
今年の受賞館は、

  • バルチモア郡公共図書館(メリーランド州トーソン) - “Storyville: An Interactive Early Literacy Learning Center”
    2,250平方フィート(209平米)のお子様サイズの”村”をつくり、就学前の子供たちの読書の機会を提供した企画。全米的な注目を集め、8ヶ月間のイベント期間中に、5万人の来場者を集めた。

  • グインネット郡公共図書館(ジョージア州) - リーディングフェスティバル
    10月18日に開催されたリーディングフェスティバル。2回目の開催。50名以上の著者が招かれ4,500人以上が人たちが参加した、主に大人をターゲットにしたリーディングフェスティバル。地域の46機関の協力を得、また総額6万7000ドルのスポンサーからの出資を得た、企画に長けたイベント。

  • ヒューストン公共図書館(テキサス州ヒューストン) - “A New Chapter
    改装した中央図書館のグランドオープニングを記念したPRキャンペーン。2万人以上の来場者を集め、多くのメディアに報道されるとともに、新規の多くの利用者を開拓した。

  • マルトノマ郡図書館及び図書館基金(オレゴン州ポートランド)- “Campaign for a Lifetime of Literacy
    5ヵ年計画の双方コミュニケーション及びファンドレイジングのキャンペーン。図書館が子供のリテラシーのリーダーであり、またパートナーであることについての認識を高めることに寄与。夏のリーディングプログラムだけでも合計5万人の子供たちの参加を集め、また1200万ドルの資金調達に成功。

  • セントポール公共図書館(ミネソタ州) - “St. Paul-itics
    市民に選挙に関する情報を提供し関与を高めるダイナミックな企画を展開。様々な政治に関係する組織等と協力して、あらゆる年齢層をターゲットとした40のプログラムを開催。図書館のコミュニティにおける役割を変革し、市民の参加を集め、意識を高め、さらに図書館へのオンラインアクセスを増加させた。

  • イプシランティ地区図書館(ミシガン州) - “Second Annual Ypsilanti Songwriting Festival
    音楽と舞台芸能を通じて、従来図書館を利用していなかった人たちに、図書館サービスをアピールするユニークな企画。ティーンと18才から45才の男性をターゲットにし、実際参加者の75%は男性でしめられた。宣伝媒体としてMy Spaceを積極的に活用


 
個人的には・・・
セントポール公共図書館の選挙に関係したキャンペーンである”セントポーリティクス”が今年を象徴するキャンペーンだなと思いました。大統領選挙のために米国人の政治への関心がとても高まっていた2008年は、多くの公共図書館で大なり小なり選挙に関連する企画がみられましたが、偏りのない情報提供を追求する米国公共図書館が、積極的な情報提供を行うには様々な試行錯誤があったものと思います。その中でセントポール公共図書館の活動は、実に果敢に多様な活動を展開したようです。
 
例えばイベントとして、

  • 政治的シーンを描いた映画シリーズでは、"The War Room"、"The Manchurian Candidate"、"Dr. Strangelove, or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb"、 "Mr. Smith Goes to Washington"といった作品の上映会を開催
  • 講演会シリーズでは、”The Undecided Voter’s Guide to the Next President”の著者Mark Halperin氏、”The Citizen Solution: How You Can Make a Difference”の著者Harry C. Boyte氏、KSTP Eyewitness Newsの政治記者主任Tom Hauser氏などを招聘、
  • 候補者フォーラムでは、大統領選挙と同日に行われた議会選挙の候補者の地区別フォーラムについて、会場提供や、広報活動の補助を実施、

を行っています。
 
さらに、選挙をテーマとする図書館独自のブログを解説し、様々な情報提供を行っています。

このほか、これはほかの図書館にも多くみられますが、”図書館らしく”選挙や政治・社会に関するブックリストを作成しウェブサイトに公開したり、投票所を確認するための2次情報を提供したり、子供たちと一緒に選挙を学ぶための2次情報を提供したりと情報提供を行っています。
 
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豊かな北米の東アジア図書館文化を訪ねて:ワシントン大学(セントルイス)東アジア図書館(現地レポート)

北米の研究図書館には、50機関ほど東アジア(いわゆるCJK-China,Japan,Korea-)のコレクションをもつ図書館があります。大学図書館にある東アジア図書館は、東アジアに関する研究者、留学生、そして様々な情報ニーズをもつ学生たちにサービスを提供しています。また、米国議会図書館、ニューヨーク公共図書館の東アジア資料室は歴史を感じさせるもので、部屋に入るとそれだけで感動を覚えるほどの場所です。
 
そんな東アジア図書館の1つ、ワシントン大学(セントルイス)の東アジア図書館を、先日訪ねてみました。
 
詳細はこちらから。
 
Washington University Libraries: East Asian Library
http://library.wustl.edu/units/ea/
 
ワシントン大学と邦訳される大学は、現在、ワシントン州シアトルにあるUniversity of Washington(U.W. ユー・ダブ)と、ミゾーリ州セントルイスにあるWashington University(Wash U ワッシ・ユー)の2つがあり、いづれも東アジア図書館をもち、日本人ライブラリアンが活躍しています。今回訪ねたのはワッシ・ユーのほう、ワシントン大学(セントルイス)です。
 
セントルイスは、大陸横断鉄道やルート66などが通る、西への交通の要所として発展を遂げてきました。その歴史を象徴する全米一の高さを誇るモニュメント、ゲートウェイ・アーチがあります。ワシントン大学(セントルイス)は、アーチのあるダウンタウンの西側の地区にあり、美しいゴシック調のキャンパスをもつ大学です。
 
ゲートウェイ・アーチ

 
ワシントン大学キャンパス

 

 

 

 

 
数年前に改築されたオリン図書館(中央図書館、John M. Olin Library)

 
東アジア図書館
広大なキャンパスの一角の、同じ色調のたてものの一角に東アジア図書館はあります。オリン図書館からは徒歩3分ほど離れた別の建物です。外から一見すると小さそうですが、中に入ると外観以上に格調高き内装に目を見開いてしまいます。
 

 

 

 
所蔵数は、書籍、製本済み雑誌だけでおよそ15万冊、その他CD-ROM、マイクロフィルム、マイクロフィッシュなど様々な媒体の資料を所蔵しています。中国語、日本語、韓国語で書かれた資料がほとんどで、英語で書かれた東アジア関係資料は、オリン図書館のほうにあります。
 
閲覧室と向かい合うようにある開架書庫には、仏教、文学関係をはじめとする日本語資料がそろっているほか、なぜか、誰かが寄贈したのか、”夏子の酒”もそろっていました。
 

 
東アジア図書館は、主にワシントン大学(セントルイス)の東アジア研究の研究者に対してサービスを提供していますが、この美しく格調高い内装は学生にも愛され、東アジア研究とはあまり関係のない学生たちも多く勉強をしにくるそうです。確かに、こんな図書館がそばにあれば、ずっと居続けたいとおもいます。
 
感想とお礼と
北米の東アジア図書館のその豊かな姿は、まだまだ日本の図書館からは見えていないものだとおもいます。私自身、こちらにくるまでは話には聞けどイメージのわかない世界でした。幸にもいままで数館の東アジア図書館を訪問する機会を得てきましたが、1館訪問するごとに、その豊富な資料、優秀なライブラリアン、全米に広がるネットワークなど、その豊かな姿に感動が深まっていきます。
 
実はこの訪問は、この1月から東アジア図書館に就職され、ライブラリアンとしてのキャリアをはじめられた田中あずささんを訪ねてのものでした。まだ就職して間もない時期での訪問にもかかわらず、すでにいろいろと勉強されていらっしゃり、刺激になりました。いろいろとお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。この豊かな文化を伝えるべく、どんどん情報発信をしていってほしいとおもいます。これからのご活躍を期待しております。