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2008/12/19

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米国図書館協会年次大会2008:現地レポート

米国図書館協会の年次大会は、この数年、万単位の来場者数を誇っている米国図書館界最大のイベントです。カリフォルニア州アナハイムで開催された2008年の年次大会も2万人を超える来場者があり、大変な盛り上がりを見せていました。
 
詳細はこちらから。
 




情報のプロによる情報のプロのための会議


ALAの年次大会に参加してのもっとも強い印象は、この大会が、「情報のプロによる情報のプロのための会議」なのだということでした。図書館は、膨大な情報を、分類や主題などのメタデータの付与による整理、物理的空間の設計、人的サービスや最新の情報技術の利用などを通じて、いかにしてわかりやすくその情報を必要とする利用者に届けるのかと追求するものだと思いますが、今回会議の「利用者」として参加してみて、その図書館の基本が会議の隅々に徹底して実践されているのが印象的でした。

まず、初めて参加する人のために、それぞれの部会やラウンドテーブルが新人の勧誘も兼ねて大会全体の案内をしてくれる、101というセッションがあります。今回の年次大会は、アナハイム・コンベンションセンターのほか,隣接するヒルトン、マリオット、ディズニーランドホテルなどの会議施設も使用しており、同時並行で数十の会議プログラムが行われ、自分がどのプログラムに参加するべきなのかを決定するだけでも、とても悩ませられます。そんな初心者のために、部会やラウンドテーブルの101では、それぞれが力を入れているプログラムについて大まかな説明が行われ、なんとなく、「これは絶対に行ったほうがいい」、「これはやめておこうか」といった判断が、ある程度つけられます。そのほか、会場間の移動の方法、飲食などの情報、部会等のラウンジの場所なども案内されます。私もLAMA(Library Administration and Management Association)やIRRT(International Relations Round Table)など2、3の101に参加し、うまく会議の内側へといざなってもらえました。このほか、アナハイムコンベンションセンターの入り口正面にはインフォメーションデスクが設けられ、また各所に案内人が配備され、アフターで利用する飲食店情報などについてはホテルなどのコンシェルジュと連携してサービスを提供するなど、当然のように行われていました。図書館は、初めて入ってくる人でも自然とカードを作りなじんでもらえるように工夫するものですが、そういう技術が会議でも活きるのだなと感じさせられました。

また、情報のプロが参加者の会議として、参加者の情報発信を最大限に活かすように考えられています。会場の全てにおいて無線LANが通じていて、参加者は会場のあちこちでノートパソコンを広げ、随時ブログに情報をアップしたり、チャットやインターネット電話で連絡を取り合ったりしていました。特に印象的だったのが、Flickr上での写真の共有でした。運営者サイドから、"ALA2008"のタグとともにFlickr上で写真を共有しようと呼びかけがあり、参加者はそれに応えて多くの写真を次から次へとアップしていました。
(共有された写真はこちらのURLで見れます。http://www.flickr.com/photos/tags/ala2008/)。

さらに、会議資料や会議の討議内容などは、特設のWikiサイトに共有することが勧められていました。一部のベンダーなどでは会議資料をネットで配信しないという方針のところもあるようでしたが、多くの資料が大会前あるいは大会期間中にWikiにアップされていました。
(このWikiサイトは、以下のURLで見れます。http://wikis.ala.org/annual2008/index.php/Annual_2008

大会期間中の会話の中でも、「Flickrに写真アップする?やり方わかる?」「Wikiって初めて使ったわ」などといったやり取りがあり、会議の場を通じたこのような実践を通じて、有効性が確認され、使い方の情報交換が行われ、各図書館でのWeb2.0技術の導入につながっているのだなという印象をうけました。

図書館界の産業力


圧倒されたのは、展示会場の規模でした。米国の図書館産業が大きな力を持っているのは前から認識していましたが、”たかが”図書館の大会に、ここまで様々な会社が集まってくるということに、カルチャーショックを受けてしまいました。特に、出版社、電子ジャーナル関連の会社、デジタル化の機器関連の会社が軒並み参加しているのはもちろんのこと、図書館情報学校のパビリオンや、マンガやゲームのパビリオンの活況ぶりは、日本との大きな違いを感じさせられました。
 
マンガやゲームは、子どもたちを図書館と結びつけるためのその1つの手段として、あるいは読み書き能力や社会性を身につけさせるための手段として、近年注目されています。会場には、子ども連れの姿も多くみられ、子どもたちがゲーム・パビリオンで、ゲームに興じ、それを大人の図書館員たちが説明を受けながら眺めているという様子が常に見られ、図書館員の関心の高さが感じられました。
 

参考:
2008年度ALA年次大会 <報告>
http://current.ndl.go.jp/e816
 

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