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2008/12/29

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全ての知へのゲートウェイ:サウスフィールド公共図書館現地レポート

デトロイト都市圏のライブラリアンが皆「サウスフィールドはすばらしい」と口をそろえるサウスフィールド公共図書館に行ってきました。2003年に新しい建物を建て最先端のサービスを展開している図書館ですが、実は資料では1844年あたりから活動が確認される歴史ある図書館です。以前1980年代90年代と日野図書館と交流があったといえばなんとなくうなづけるものがありますが、今のサウスフィールド図書館の姿は、市民のニーズに基づいて同時代性を追い続けると図書館はこう進化するのかと、思わずうなってしまう図書館です。

詳細はこちらから。

Southfield Public Library
http://www.sfldlib.org/



建築の背景


デトロイト中心部から高速にのって車を20分ほど走らせたところにあるサウスフィールドは、多くの大企業がオフィスを構える商業地区であり、なおかつ中心部から郊外へのミドルクラスの人たちの移動の中で人口も増加してきた地域です。1970年代までにユダヤ系、90年代までにミドルクラスの黒人が移住し、現在は白人約40%、黒人約55%という人口構成になっています(参考:DataPlace)。オフィススペースはデトロイト中心部よりも多いともいわれ、ローレンス工科大学やオークランドコミュニティ大学など8つの大学が図書館から数マイルの距離にあります。この勢いよく発展を続けた地域で、図書館を時代のニーズにあった最先端のものにしようという運動がおこったのが90年代後半で、その後99年に3600万ドルの新図書館建築費用の目的税が市民投票によって承認されました。新図書館建築をリードした当時の館長Doug Zyskowski氏は、新しい図書館を、”我々が知る全てへの、また我々が知ることを夢見てきた全てへのゲートウェイ”となるものにしようと強力なリーダーシップを発揮し、また奇抜な建築アイデアもどんどん取り入れていったそうです。様々な機会・方法を通じて集められた市民のニーズに基づき設計は進められてゆき、2003年に時間的にも予算的にも計画どおりに建設が行われ開館しました。

子供が「行きたい!」という場所


ディズニーランドや映画など、子供が行きたい!という場所はたくさんありますが、子供が「図書館に行きたい!」と駄々をこねるほどの図書館というのはなかなかない気がします。が、この図書館は、そういう図書館なのだそうです。この図書館は12歳以下の子供は親と同伴でなくてはいけないというセイフティー・ポリシーがあります。実際広大なアメリカのこと、移動手段の限られる小さな子供がくるのはちょっと難しいものがあります。それなのに、年末のこの日も小さなよちよち歩きの子供たちから高校生ほどの年齢と思われる子供たちまで、図書館は活気に満ちていました。児童室のライブラリアンに尋ねたところ、これがなんとなく普通という感じの状態で、近隣の学校が終わったあとの時間帯は、毎日大騒ぎで、子供たちが大人たちを引っ張ってくるのだそうです。

確かに魅力的です。Reader's Tree houseやDragon's Denと名づけられたコーナーは、居心地がよくて小さな子供たちはそりゃぁ大好きだわという空間でしたし、、Club Q&Aは名前のとおりちょっとしたクラブのようで中高生がここで時間をすごすことをカッコイイと思うのもうなずけました。コンピュータ端末も、グループ学習室も、どこもいっぱいで、年末なのに子供たちは楽しげにわいわい勉強していました。家具は皆木製でとても優しい感じでした。

Reader's Tree house


木の裏側には暖炉があり、暖炉の前にはチェスボードがありました。ぽかぽかで幸せ。


木の中も居心地よさそう。


Dragon's Den
手前の入り口の天井部分は大きな本。


近づいていくとドラゴンの吠える声が聞こえてくる。アミューズメントパークそのもの。


Club Q&A
ティーンコーナーはクラブっぽいつくり。これが図書館のメインエントランスを入ってすぐ左の一等地にある。


大人がちょっとよい身なりで出かける場所


どちらかというと成人向けの2階、3階を歩いていてとても気になったのが、大人がとてもおしゃれなかっこうをしているということでした。ガラス張りのグループ学習室は、明らかに仕事の最中と思われるゴージャスなみなりの女性が連れ添って利用し、ビジネスレファレンスのコーナーでパソコンをたたく人もやり手の空気をかもし、暖炉の前で本を広げる白髪の男性もとてもエレガントな立ち居振る舞いをし、なにかおしゃれが気になりました。もちろんカジュアル派もあたりまえにいましたが、今まで見てきた他の図書館ではありえないほどおしゃれな格好をしている人がおおくいました。高所得層なのかと思い、後で館長とお話をしたときにこそっときいたところ、そういうわけではなく、図書館にそういう機能と空気があるから、みんな自然にそうなっているのだと思うという返事が返ってきました。確かにビジネス向けの資料が充実し地域の研究図書館的な役割を果たしており、ビジネス目的での勤務中での利用が多いのは確かだそうです。

無線も図書館IDなしでログインできました。


人が多すぎて写真がうまくとれず。デスクスペース、コンピュータスペースは撮影は不可能でした。


館長室へ


この図書館は館長クラスの人とお話をできればと思っていたのですが、カウンターのライブラリアンが、私が言うよりも先に撮影が終わったら館長のデイビッドに会いに行ったらいいわと勧めてくださいました。一通り撮影が終わり館長室に訪ねていくと、デイビッドさんが笑顔で迎えてくださり、自慢のサウスフィールド・ルームに案内してくれました。この部屋は理事会などが行われる部屋で、実はハリウッドの映画の撮影現場にもなったそうです。1日あたり1000ドルほどの使用料収入が得られたとか・・・。


なぜこのように成功を遂げることができたと問うと、市民・地域との関係だとの答えが返ってきました。地域に8つある大学からの期待、地域の企業のビジネスパーソンたちとの関係構築、地元の人たちのあらゆるニーズに応えようとしてきた歴史、そういったものが図書館建築目的税の承認、内装の装飾品や蔵書の寄付寄贈、圧倒的な利用頻度などにつながってきたのだそうです。現館長はこの図書館建築後に他の図書館から引き抜かれてきたので当時のことは聞く範囲でしかないとのことでしたが、現在の不況・財政難の中にあっても、「この利用者の行列をなしている様子を見てごらんよ。絶対にサービスの質は落とせない。」と笑顔の奥に真剣なまなざしで語ってくださり、その姿から常に市民との関係を最高の状態に保っている図書館の底力を感じました。

写真スライドショー


利用者が多すぎて撮りたい場所の写真がうまく撮れませんでしたが。


サウスフィールド公共図書館提供の写真 on Flickr
http://www.flickr.com/photos/southfieldlibrary/

ひとこと感想


この図書館、もし機会があれば、ぜひどこかでもっと紹介したいと思います。

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