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2009/01/16

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ピッツバーグ公共図書館のOPAC、”Encore”へ

ピッツバーグの公共図書館(Carnegie Library of Pittsburgh)が、検索インターフェースにInnovative社のEncoreを採用し、先日、新システムへの切り替えを行いました。Encoreのファセット検索、タグ、スペルチェック機能、表紙画像のサムネイルの表示などが使えるようになったほか、従来のOPACからは直接つながっていなかった"Access Pennsylvania"、一部の外部サイト(Medline Plusなど)へも接続されるなど、利用者の資料の発見・入手が、また一歩便利になったようです。
 
プレスリリースなども出ておらず、たまたま資料を検索していて気がついたので、おやっと思ってライブラリアンに聞いたところつい2,3日前に切り替えが行われたそうで、「私も今慣れようとしているところ」だとのことでした。
 
詳細はこちらから。
 
Carnegie Library of Pittsburgh
http://www.carnegielibrary.org/ 
 
トップページのGoogleチックなシンプルな検索ボックスに検索語を入れて"Go"をクリックすると、検索結果が出てきます。キャプチャーは、あまりいい例ではありませんが、政府印刷局(GPO)出版の"congressional pictorial directory"の検索結果画面です。
 

 
画面の左カラムには、ファセットとして以下の項目がたっています。(画面はCLPのウェブサイトより)

  • Search Found In: 検索語がデータベースのデータベースのどこにヒットして表示されたのかがわかる。著者名(Author)、タイトル(Title)、主題(Subject)、タグ(Community Tags)の4つが表示されるので、自分がタイトルのつもりで検索語を入れたのであれば、”タイトル”を、主題やキーワードのつもりで入れたのであれば、”主題”や”タグ”をクリックし、検索件数を絞ることができる。
  • Format:利用したい資料の媒体が選べる。印刷資料、電子資料、CD、ビデオなど。
  • Collection:CLPのどこの図書館に入っているかを選ぶ。本館や分館の名前がアルファベット順にならぶので、近くのアクセスポイントを選ぶ。
  • Location:Collectionと重複している気がするが、これもどこの図書館にあるのかを選べる。ヒット件数の多い順に並んでいる。
  • Language:資料が書かれている言語を選ぶ。
  • Date:出版された年を選ぶ。

 
中央カラムには、検索結果が関連性の強さの順に表示されます。どういう仕組みか正確にはわかっていなのですが、一番上に電子版の"congressional pictorial directory"が表示され、クリックするとGPO ACCESSに飛びます。以下CLPの所蔵資料が並びます。私の探していた版はありませんでした。
 
右カラムの一番上にあるのが、"Access Pennsylvania" へのリンクで、”26”という数字が表示されているので、ペンシルバニア州内のどこかの図書館がこの資料をもっていることがわかります。この場合はCLPの所蔵している版が限られているので、他の図書館も見る価値があります。Show(26)のリンクをクリックしてみると、"Access Pennsylvania"のシステムに検索語を継承したまま飛び、ほしかった資料を発見。

ほしい資料の所在がわかったのに加えて、今まで使ったことのなかった総合目録/相互貸借システムからみつけたので、うれしさ倍増。ちなみにこの総合目録システムは、ペンシルバニア州内の大学、公共、学校図書館などの3000以上の目録データベースの総合目録で、合計1680万タイトル、7090万点の資料が検索できます。


(Image from Access Pennsylvania website)

まだ、セッション切れの時間が短かったり、外部データベースへの接続が遅かったり、デザインの統一感にかけていたりする気がして、調整中という印象があります。これらのあらがとれて、図書館員や利用者によって付けられるタグの量が増えていくとまた使い勝手が若干変わってくると思うので、成長が楽しみなところです。
 
参考:
Innovative社の次世代OPAC"Encore"導入館(カレントアウェアネス-R)
http://current.ndl.go.jp/node/9623
 

2009/01/15

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活字を読む街ランキング2008


ピッツバーグにいて、アメリカ人というのは本当によく読みよくしゃべる人たちだなぁと時々感じますが、活字の利用度に関する調査で、ピッツバーグは今年もランキングの上位(13位)にランクインしていました。
 
詳細はこちらから。
 
America's Most Literate Cities 2008
http://www.ccsu.edu/AMLC08/overview.htm
 
この調査は、セントラルコネチカット州立大学のJohn W. Miller博士が毎年、人口25万以上の都市を対象に行っている調査で、書店、教育水準、インターネット、図書館、新聞、出版の6つの分野の統計データから導き出しています。2008年版では71市が対象となっています。またそれぞれの指標は、それぞれ単位人口あたりの以下の数値に基づいています。

  • 書店:小売書店軒数、古本屋軒数、全米小売書店協会の会員数
  • 教育水準:高卒以上の人口、大卒以上の人口
  • インターネット:ネットでの書籍購入件数、市の新聞サイトのユニークユーザ数およびページビュー件数
  • 図書館:図書館(建物としての)件数、所蔵数、貸出数、専門職数
  • 新聞:日刊紙発行部数、日曜版発行部数
  • 出版:人口10万あたり発行部数2500以上の雑誌出版社数、人口10万あたり発行部数500以上の雑誌数

 
総合ランキングでは、毎年争っているミネアポリスとシアトルが同率首位、続いてワシントンD.C.、セントポール、サンフランシスコ、アトランタ、デンバーなどが入り、ピッツバーグは12位、なにかとライバルのクリーブランドは13位となっています。
 


図書館があれば本も新聞も売れる(?)

 
新聞の発行部数が減ってきているのはインターネットで新聞が読めるようになったからだ、とか、無料で本を貸し出す図書館があるから本が売れない、とか、日本でもよく聞かれる言説が米国でも聞かれます。これらについてミラー氏は、この調査においては、インターネットと新聞、書店と図書館の指標において正の相関関係が確認されることから、「これらの社会通念は誤りである」("And in all cases, the conventional wisdom is wrong.")とコメントしています。
 
相関関係があるだけなので、「良い図書館がたくさんあってインターネットサービスも充実していれば本も新聞も売れる」とは必ずしもいえないかもしれませんが、米国の図書館がどんどんサービスを充実させるのには十分な理由になりそうです。
 

図書館の指標でのトップはクリーブランド


図書館の指標だけを抜き出してみると、トップはオハイオ州クリーブランドで、ピッツバーグは10位になります。クリーブランドは教育水準の指標において68位で下から3番目、それに対して図書館がトップと、とてもバランスがいびつな感じがします。この2つの市をレーダーチャートにすると、なんとなく形が似ています。やっぱりなにかとライバル・・・。
 

 
参考:
米国で最もリテラシーの高い/図書館資源が充実した都市は?(2007年版、カレントアウェアネス-Rより)
http://current.ndl.go.jp/node/7083
 

2009/01/13

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オーストラリアの図書館ネットワークUNILINKがPrimoを採用

約20のオーストラリアの大学図書館、研究図書館等が参加する図書館協力ネットワークであるUNILINCが ExLibris社の統合検索システム("次世代OPAC")であるPrimoを採用したと、Ex Libris社からプレスリリースが出ています。
 
詳細はこちらから。
 
Jerusalem, Israel – January 13, 2009
The UNILINC Library Network in Australia Selects Primo by Ex Libris
http://www.exlibrisgroup.com/?catid={916AFF5B-CA4A-48FD-AD54-9AD2ADADEB88}&itemid={10E08E42-A5AD-4EE4-A865-FECF3BFDA619}

UNILINCは、従来より統合図書館システムを共同利用しており、そのシステムとして、Ex Libris社のAleph統合図書館システムMetaLibポータルシステムDigiToolデジタル資料管理システムVerde電子資料管理システムを使用してきました。さらに今回利用者インターフェースとしても同社のPrimoを採用することになったとのことです。
 
 
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数値でみる米国図書館の新館建築・増改築の推移と傾向

毎年数多くの図書館が建設される米国ですが、経済の冷え込みが明らかになった2008年度も、総じてみると、図書館建築にはその影響が現れていないようです。公共・大学図書館あわせて213館の新築・増改築が行われました。
 
詳細はこちらから。
 
Library Buildings 2008: Keeping the ''ECO'' in Economy
Public and academic buildings combine for 213 projects in 2008
http://www.libraryjournal.com/article/CA6618892.html

2007年7月1日から2008年6月末日までに完了した新館建築あるいは増改築のプロジェクトの総件数は、合計213件となっています。このうち公共図書館は183件、大学図書館は30件となっています。

公共図書館についてみてみると、過去6年間の建築・増改築件数は、大きな変化は見られず、安定して180件前後となっており、また金額についても、新館の費用は7億ドル、増改築の費用は3億ドル前後となっています。2008年度は、これらを若干上回る値になっています。

(LJのデータをもとに作成)

米国の図書館建築においては、環境を考慮したグリーンアーキテクチャーの傾向はすでに定着している感がありますが、本年度の調査では、設計に影響を及ぼした”持続可能性”の要素などについてたずねており、再生技術が向上している粘土瓦や、エネルギー消費を抑える採光窓の導入、水の再利用などを取り組んだ建築が行われていることを確認しています。
 
Library Journal誌では、2008年度の大学図書館の新館建築および増改築公共図書館の新館建設および増改築の、個別の数値データを確認することができます。ちなみに、この数値を通じて図書館建築の動向を見守るこのLibrary Jounal誌の特集は30年続いているそうです。
 

2009/01/11

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図書館が関わるSNSはFacebookだけにとどまらない

先日数年後にはソーシャルネットワークが電子メールにかわってオンラインコミュニケーション手段になるという話をきき、アメリカチックだとおもいましたが、それをどう思うかは別としてソーシャルネットワークは拡大を続けています。Facebookやhi5、MySpace、Beboなどのメジャーなソーシャルネットワークにとどまらず、様々なコミュニティーで様々なオンラインソーシャルネットワークが使われるようになってきていています。教育分野のEduSpace、ビジネス分野のLinked-In、LGBTグループのOUTeverywhere、宗教分野のMychurchなどのほか、NingなどをベースにもっとニッチなSNSがどんどん生まれています(リスト)。SNSに積極に関わっている米国の図書館ですが、Facebookなどのメジャーどころはともかくとして、図書館がそれ以外のSNSのどこにどのように関わっていっているのか、もはやつかめない感じがします。
 
そんな図書館界が関わるSNSの世界をウォッチしているGerry McKiernan氏が、Internet Librarian 2008で使用したプレゼンテーションファイルの改訂版を公開しています。204スライドの大部のもので、多くの画面キャプチャが入っています。
 
詳細はこちらから。

http://onlinesocialnetworks.blogspot.com/2008/11/not-just-facebook-online-social.html

前半89スライドはざくっとしたバックグラウンドとFacebookのレビュー、後半はニッチなオンラインソーシャルネットワークの説明になっています。せっかくなのでニッチな世界での活動の具体例がもっと入っているといいなとおもいますが、Facebookなどでの活動の一端は垣間見れます。
 
ダウンロード → http://www.public.iastate.edu/~gerrymck/IL2008-DC.ppt
 
多くの大学が”キャンパス”を開設しているSecond Lifeの図書館の活動なども少しだけ紹介されています。
 

 

 
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”顔”としてのピッツバーグ公共図書館ファーストフロア:現地レポート

どこの図書館もすくなからず図書館の顔となる部分があります。入り口を入ってすぐのところなど、人の流れが集まる場所には、季節の特集を組んでみたり、時事問題に関する本を集めてみたり、社会問題を考えるコーナーをつくってみたりします。整然と分類されて配架されている蔵書を眺めるのとは別に、その図書館の姿勢やメッセージが詰め込まれたコーナーを見るのは、ひとつ面白い作業です。ピッツバーグ公共図書館本館の1階”First Floor - New & Featured”は、一連のキャピタルキャンペーンで得た資金を最初に投入して改築された部分であり、いわば、ピッツバーグ公共図書館システム全体の顔であることを宣言して作られた場所です。
 
この図書館の顔が語るものとはなにか。このコーナーに背景知識なしにくる多くの利用者には、どのように映るのでしょうか。
 
詳細はこちらから。
 
Carnegie Library of Pittsburgh "First Floor - New & Featured"
http://www.carnegielibrary.org/locations/firstfloor/
 
ピッツバーグ公共図書館(Carnegie Library of Pittsburgh)本館1階を入り口から入る(フロアマップの下部)と廊下があり、そこから進んでいくと、"New & Feature"のコーナーがあります。1階全体には、カフェ(クレイジー・モカ)、ティーンコーナー、閲覧室、館長室、会議室などがあり、それらにぐるりと取り囲まれるように、一等地の広いスペースに新刊・特集("New & Feature")コーナーがあります。”閲覧室”は特に仕切りがあったりするわけではなく、ソファーがおかれ、資料はノンフィクション、料理本、旅行ガイドのみが置かれています。このフロアは全体的に飲食が自由で、クレイジーモカでコーヒーとビスコッティ(ここのはとてもオイシイ)をかってテクテク閲覧室に歩いていき、そこで本を読みながら飲食するという利用者が多くみられます。
 
開架書庫はこれらのスペースの裏手側にひろがっていて、利用者は子供も大人も自由に立ち入りできるようになっています。館全体の蔵書の分類は、特に古い資料はデューイ十進分類法(DDC)ですが、米国議会図書館分類表(LCC)をつかっています。特徴的なのは、そのほとんど全てが、開架書庫に入っており、明るい閲覧室におかれる読み物系の本は、1階の新刊・特集コーナーと閲覧室に限定されるということです。
 

 
このコーナー(上図中ピンクの部分)に置かれているのは、まずは、新刊とベストセラーです。これは書店モデルの図書館には多く見られるレイアウトです。このコーナーの本は、ペンシルバニア州のBrodart(McNaughton Book Service)社からレンタルで借りてきている本で、定期的に入れ替わっていく仕組みになっています。平積みしてあったりと、1タイトルあたり複本を10冊程度取り揃えています。



新刊・ベストセラーコーナーを取り囲むように、一般的なライトノベルが置かれ、それに続いて”African American"文学のコーナーが大きなスペースをとっています。個人的な印象ですが、ピッツバーグは比較的人種が交じり合うことなく分断してコミュニティを作っています。本館のあるオークランド地区はピッツバーグ大学とカーネギー大学がある学生街なので完全に混じっていますが、全体としてみると、特にアフリカ系の人たちはかなりかっちりとコミュニティの境界があります。もちろんそれが良い悪いということでは決してなく、特徴や文化や生活が固有のまま存続してきているという印象です。言葉も表現も文体もことなるアフリカンアメリカン文学へのニーズはあり、それに基づき図書館もこのカテゴリーをフィーチャーしています。


そのすぐ奥の書架は、GLBTのコーナーになっています。GLBTとは、ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーの略です。このコーナーにはGLBTをテーマとする小説が集められ、フィーチャーされています。


さらにその隣の書架には、多言語の小説が置かれ、アラビア語、中国語、韓国語、そして日本語などの小説などが集められています。留学生に多く利用されているようです。

その横の壁際には、インスピレーショナル・フィクションと分類される本のコーナーがあります。宗教的教義に基づいた小説などが主におかれています。

 

 
ファーストフロア・ライブラリアンの説明によると、これらの資料は、ある程度まとまったニーズが、ある程度きまったコミュニティから寄せられるこれらの資料群ですが、LCCに基づき分類すると分散してしまうので、これらを集め、積極的にフィーチャーしているのだそうです。
 
キャピタルキャンペーンの期間中、ピッツバーグ公共図書館の目指す方向性を体現した姿として積極的にその特徴をアピールされたファーストフロア。無作為を追求するのとは異なる、この、より明確に”顔”を出していく姿勢は、利用者にどのようなメッセージを伝えたのか、日本人の私にはまだまだつかみきれない感じがしています。