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2009/01/11

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”顔”としてのピッツバーグ公共図書館ファーストフロア:現地レポート

どこの図書館もすくなからず図書館の顔となる部分があります。入り口を入ってすぐのところなど、人の流れが集まる場所には、季節の特集を組んでみたり、時事問題に関する本を集めてみたり、社会問題を考えるコーナーをつくってみたりします。整然と分類されて配架されている蔵書を眺めるのとは別に、その図書館の姿勢やメッセージが詰め込まれたコーナーを見るのは、ひとつ面白い作業です。ピッツバーグ公共図書館本館の1階”First Floor - New & Featured”は、一連のキャピタルキャンペーンで得た資金を最初に投入して改築された部分であり、いわば、ピッツバーグ公共図書館システム全体の顔であることを宣言して作られた場所です。
 
この図書館の顔が語るものとはなにか。このコーナーに背景知識なしにくる多くの利用者には、どのように映るのでしょうか。
 
詳細はこちらから。
 
Carnegie Library of Pittsburgh "First Floor - New & Featured"
http://www.carnegielibrary.org/locations/firstfloor/
 
ピッツバーグ公共図書館(Carnegie Library of Pittsburgh)本館1階を入り口から入る(フロアマップの下部)と廊下があり、そこから進んでいくと、"New & Feature"のコーナーがあります。1階全体には、カフェ(クレイジー・モカ)、ティーンコーナー、閲覧室、館長室、会議室などがあり、それらにぐるりと取り囲まれるように、一等地の広いスペースに新刊・特集("New & Feature")コーナーがあります。”閲覧室”は特に仕切りがあったりするわけではなく、ソファーがおかれ、資料はノンフィクション、料理本、旅行ガイドのみが置かれています。このフロアは全体的に飲食が自由で、クレイジーモカでコーヒーとビスコッティ(ここのはとてもオイシイ)をかってテクテク閲覧室に歩いていき、そこで本を読みながら飲食するという利用者が多くみられます。
 
開架書庫はこれらのスペースの裏手側にひろがっていて、利用者は子供も大人も自由に立ち入りできるようになっています。館全体の蔵書の分類は、特に古い資料はデューイ十進分類法(DDC)ですが、米国議会図書館分類表(LCC)をつかっています。特徴的なのは、そのほとんど全てが、開架書庫に入っており、明るい閲覧室におかれる読み物系の本は、1階の新刊・特集コーナーと閲覧室に限定されるということです。
 

 
このコーナー(上図中ピンクの部分)に置かれているのは、まずは、新刊とベストセラーです。これは書店モデルの図書館には多く見られるレイアウトです。このコーナーの本は、ペンシルバニア州のBrodart(McNaughton Book Service)社からレンタルで借りてきている本で、定期的に入れ替わっていく仕組みになっています。平積みしてあったりと、1タイトルあたり複本を10冊程度取り揃えています。



新刊・ベストセラーコーナーを取り囲むように、一般的なライトノベルが置かれ、それに続いて”African American"文学のコーナーが大きなスペースをとっています。個人的な印象ですが、ピッツバーグは比較的人種が交じり合うことなく分断してコミュニティを作っています。本館のあるオークランド地区はピッツバーグ大学とカーネギー大学がある学生街なので完全に混じっていますが、全体としてみると、特にアフリカ系の人たちはかなりかっちりとコミュニティの境界があります。もちろんそれが良い悪いということでは決してなく、特徴や文化や生活が固有のまま存続してきているという印象です。言葉も表現も文体もことなるアフリカンアメリカン文学へのニーズはあり、それに基づき図書館もこのカテゴリーをフィーチャーしています。


そのすぐ奥の書架は、GLBTのコーナーになっています。GLBTとは、ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーの略です。このコーナーにはGLBTをテーマとする小説が集められ、フィーチャーされています。


さらにその隣の書架には、多言語の小説が置かれ、アラビア語、中国語、韓国語、そして日本語などの小説などが集められています。留学生に多く利用されているようです。

その横の壁際には、インスピレーショナル・フィクションと分類される本のコーナーがあります。宗教的教義に基づいた小説などが主におかれています。

 

 
ファーストフロア・ライブラリアンの説明によると、これらの資料は、ある程度まとまったニーズが、ある程度きまったコミュニティから寄せられるこれらの資料群ですが、LCCに基づき分類すると分散してしまうので、これらを集め、積極的にフィーチャーしているのだそうです。
 
キャピタルキャンペーンの期間中、ピッツバーグ公共図書館の目指す方向性を体現した姿として積極的にその特徴をアピールされたファーストフロア。無作為を追求するのとは異なる、この、より明確に”顔”を出していく姿勢は、利用者にどのようなメッセージを伝えたのか、日本人の私にはまだまだつかみきれない感じがしています。
 

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