以下、あまり数値を交えず、私のみた図書館情報学校の姿を、印象ベースで手短に紹介したいとおもいます。
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ライブラリースクールの存在感
日本のみならず、多くの国で非常にマイナーな学問領域ですが、米国では、図書館員という肩書きを名乗れる図書館員になるためには、図書館情報学の修士号をとることが必須ですし、図書館員という職能集団自体が社会のなかでなかなかの存在感があるので、図書館学も盛んです。
渡米した当初、アメリカ人と出会い自己紹介で専攻をライブラリーサイエンスと紹介すると、おぉ!という反応が返ってきました。広く認知されている学問領域であり、また興味をもたれている領域であることを、肌でかんじました。逆に、海外からの他学部留学生と話をすると、へぇ、そんなのがあるんだね、とか、アメリカにきてから知ったよその学問、という反応です。日本人留学生に限っては、なにそれ?なにするの?という反応が大半で、それは日本にいてもアメリカにいても変わらない感じですね。
ライブラリースクールの雰囲気
ピッツバーグ大学の場合、正確にはSchool of Information Sciencesという名称で、この情報科学学校の中に、図書館情報学、情報学、テレコミュニケーション学の3領域があります。情報学領域には、中国、台湾などからの留学生がたくさんおり、またテレコミュニケーション学領域には、中東からの留学生がたくさんいて、いい感じで混じっていますが、図書館情報学領域は圧倒的に白人ばかりで、留学生は毎年数えるほどしかありません。さらに、図書館情報学の中でも、アーカイブ系には男性学生がたくさんいますが、図書館系には、圧倒的に女性ばかりという印象です。
私と同じ時期に入学した留学生には、中国からの若い学生がいましたがみんな情報学のほうに専攻変えしてしまい、残ったのは韓国の国会図書館からの留学生と、私だけ、というような状況でした。英語ノンネイティブはほんと数えるほどです。アジアは顔ですぐにわかりますが、そのほかひっそりクラスにいる東欧や中南米からの学生を見つけるとうれしくなります。
修士号取得への仕組み
ピッツバーグ大学図書館情報学校修士課程の場合、卒業するためにとらなくてはならないクラスの数は12クラス。1学期にとる授業は3クラスから5クラス。ネイティブでフルタイムで大学院生では5クラスとる学生もおり、実質1年で卒業することも可能になっていますが、留学生は、3クラスを4学期とるというのが一般的です。授業1クラスをとると、そのために教室外で週10時間程度費やすことになるので、3クラスとると、週休2日で働いているのと同じくらいの労働量になります。博士の授業をとることも可能で、これをとると労働量がどんと増えます。どのくらいの時間を費やすのかはもちろんその人それぞれの考え方ですが、私のまわりにいた人たちは、ネイティブも留学生も、なんとなくそんなリズムでいる人たちが多かったような気がします。
私の場合は、2007年秋3クラス(プラス英語のクラス)、2008年春4クラス(内1つは博士、1つドロップ)、2008年秋4クラス(内1つは博士)、2009年春3クラス、という構成になりました。博士のコースでとったのは、質的調査法と情報政策で、とくに情報政策は今年退官される元ディーンのクラスでタフで有名なもの。週30時間くらいをこれにつぎ込み、寝ても明けても政策政策唱えているモンクのような生活になってしまいました。
とったクラスの一覧は以下のとおりです。
- 2007年秋
Understanding Information
Retrieving Information
Digital Library - 2008年春
Organizing Information
Marketing & Public Relations for Libraries
Qualitative Research
Independent Study - 2008年秋
Introduction to Information Technologies
Library & Archival Preservation
Service for Adult
Information Policy - 2009年春
Managing Libraries & Information Systems
& Services in Changing Environments
History of Books, Printing, Publishing
Government Information Resources & Services
クラスのタイプ
クラスの形式としてはは、
・大人数のものと、少人数のもの
・遠隔講義のものと、教室でおこなわれるものと、複合型のもの
・講義形式のものと、セミナー形式のものと、それ以外
で3つの軸で分類けられます。
大人数のクラスは、ほんとうにわらわらと人がいます。日本の図書館情報学大学院では想像できない姿かもしれませんが、60人超の人数が登録しているクラスもあります。このようなコースは多くが基礎科目で、入学したてのきゃんきゃんした人たちもおおいので、雰囲気は、日本の学部レベルの司書課程と若干似たようなところがあります。
少人数のクラスは、10人くらいの規模のものもあります。アメリカの大学生はよくしゃべるので、3時間のクラスの半分くらいは学生の話を聞いている感じです。もっとも、多くが現職・前職ありの人たちで、平均年齢は30歳を超えるくらいだそうで、日本の社会人大学院のような雰囲気です。セミナー形式だともっと大変で、教授よりも院生のほうがよくしゃべっています。
ピッツバーグ大学の場合、遠隔授業が充実しているのも特徴です。基礎科目も含め講義形式の授業はほとんどビデオで撮影されており、オンラインにビデオがアップされます。オンライン授業の登録者は多く、教室に来ている人の数と同じくらいがオンラインの授業もありますし、またオンラインのみで提供されている授業もあります。オンラインの授業は、学生は掲示板やブログやWikiなどに発言を書くことをもとめられ、20人もオンラインがいると、結構な分量の文章がオンラインに書き込まれます。クラスによっては全部読むことが求められるので、英語を読むこと自体勉強のレベルの私には、しょーじき、とても苦痛。。
読書量
アメリカの院生のリーディングの課題の量はハンパじゃないと聞いていましたが、私のとったコースはそれほど深刻なものはありませんでした。1週間に読む量は、1クラスにつき、多くて50ページくらい、少ないクラスでは1章20ページくらい、というところです。一番少なかったのはインフォメーションテクノロジーや電子図書館など、技術系の授業。一番読書量が多かったのは博士セミナーの情報政策で、「すくない量の文章をじっくりよんでじっくり考えてほしい」といいながら熟読用に50ページほどを毎週、というものでした。
書く量
書く量は、レポートと、オンラインに発言として書き込んでいくものとが主です。レポートは、参考文献つきのフォーマルなもので、レポートの分量は、期末レポート的なものとして大体20ページを求めるものが多く、それ以外に、ちょこちょこと数ページから10ページくらいの、短かいレポートをかきます。
日本語で出版レベルの文章を書いた経験から、日本のこの業界でおよそ出版できるレベルというのはわかっているつもりですが、レポートはそのレベルを書かないと、悲惨な点数がついてきます。最初のうちは、大学のレポートだし、、と少しあまくみていたのですが、留学生といえども文法ミスなどでも点数をひかれますし、内容で至らなければ容赦なしです。痛い目にあいました。
振り返ると結構な分量を書いたことになります。日本ではこんなに書いたかしらん。。
オンラインの発言は、1回に求められる分量は200ワードとかそんなものですが、多くのクラスで毎週のように書くことが求められます。最初のころは手元にバックアップをとっていなかったのですが、最後の学期、手元にまとめてみたところ、結構な分量になっていて、ちょっぴりうれしくなりました。
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大枠はこんな感じです。クラスごとに印象深かったことがそれぞれあるので、それはまた別の記事に書きます。
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