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2009/01/31

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異質が調和する街セダリアの公共図書館:現地レポート

カンザスシティとセントルイスという内陸で発展を遂げたミゾーリ州の2つの街のちょうど間、ハイウェイのI-70から南に外れたところにセダリアという街があります。人口は現在は20,000人ほど。鉄道のインターセクションの町として、鉄道関係の産業が栄え、その後トラックや機械のメンテナンスの基地として発展してきました。しかし、現在は北を通るハイウェイを人が通りすぎ、人口も減少傾向にあります。19世紀後半から1970年代までの営みと、その後の静かな時間の流れ。街は、異質なものが混じりあって調和している、そんなアイデンティティがあるように感じられます。
 
そんなセダリアの街に、現在もそのまま使用されているカーネギー図書館があるので、訪ねてみました。
 
詳細はこちらから。
 
Sedalia Public Library
http://www.sedalialibrary.com/
 
なんども挑戦してようやく建った図書館
アメリカのおおくの公共図書館が同様の歴史をもっていますが、セダリア公共図書館も、なんども図書館設置へ向けた住民の運動があり、そしてようやく建てられた図書館です。鉄道が通り街が大きく発展し始めた1870年前半には、住民グループが、講座や娯楽の提供とともに無料の貸本をはじめましたが、財源がもたず頓挫してしまいました。1870年代後半になり市民意識の高い女性グループが数百冊の本を購入し、無料図書館サービスを試行しました。その後1984念に無料図書館の設置構想が起こるも、一度目の住民投票はあえなく否決。翌年ようやく可決され、税金による図書館サービスが開始されました。
 
その後サービスの発展とともに、新しい建物への要望が高まり、1899年に図書館理事会メンバーがアンドリュー・カーネギーに依頼。この要望が認められ、1901年に現在の図書館が建設されるに至りました。
 

 
建物は地上2階地下1階。地下は児童室、1階は一般資料と参考調査室とコンピュータスペース、2階は学習室とオフィスになっています。足音が響くほどに静かな館内は、コンピュータまでもセピア色に閉じ込めたくなるような、歴史の匂いがします。
 
歴史建造物に指定されていることが入り口横の壁に。

 
入り口を入った正面のカウンターが図書館の中心

 
左の部屋は閲覧室。

 

 
街の歴史がガラスケースに保存されている。

 
気持ちが神聖になる階段をあがり2階へいってみる。

 

 
採光の吹き抜け。

 
100年前からこの空間で街の人が書を読み勉強していた。

 
同じ歴史を呼吸してきた壁際に置かれた本たち。ぼろぼろに読み込まれている。まだ引退はしていない。

 
見学しているうちに、どうかこの図書館はこのまま残し、そして使い続けてほしいと、願いにも似た気持ちが沸き起こってきました。静かに図書館員の方にお礼をいい、何か気持ちがきれいになって図書館の扉を後にしました。ただ、異質が交じり合うこの町の、ほんの一筋の要素しかここにはないような、そんなぎこちない違和感を感じながら。
 
「なにはともあれ、出発」とおもい、車をとめていた駐車場にもどるため交差点を対角線上に横切りながらふと横をみると、"...gional Libr..."の文字にふと目が留まりました。おや?と思い数歩もどって首をのばしてみると、やはり"Library"。どっからどうみても図書館ではないのに。
 

 
中に入っていくと、そこにはガラスのタイルに赤いネオンライトが光るカウンター。今見てきた図書館とはまったく対極な空間がそこにありました。カウンターの若い図書館員に聞くと、数年前まで車のパーツを売っているショップだったとのこと。それを買い取り、改築して、地域分館を作ったのだと。地上1階、地下1階。地上は成人向け、地下は児童室。
 

 

 
ティーンのためのゲームルームまで完備。

 
感想。。
アメリカの図書館は、その町の中心であるといわれますが、セダリアの町の図書館をみて、それは、町から産まれたものなのだから必然なのだということを、実感しました。
 
住民が、図書館が町の顔だということを知っていて、その住民たちが自分たちのほしい図書館を作る。古き時代を愛する人たちがその歴史をそのまま残したいように残す。その図書館をもち、車の修理で生業をたててきた人たちが、その大好きな空間をそのまま図書館にする。画一的な理論を押し付けた紋切り型の図書館建築ではなく、図書館が町のアイデンティティだというところにこだわる図書館建築。若き図書館員に、この赤いネオンはすき?ときくと、「クールよね」と。セダリアの町でこの色の光をみて育ってきたセダリアンには、落ち着く色合いに間違いなく。
 
町の人までかっこよく見えるようになってしまった、そんなセダリアの新旧公共図書館でした。
 
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