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2009/04/18

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図書館情報学校の遠隔授業

ピッツバーグ大学情報学校図書館情報学専攻では、多くのオンラインで受講可能な講義が提供されています。職のある人、大学から遠くに住んでいる人などを中心に、多くの院生がオンラインのクラスに登録しています。

詳細はこちらから。
 

オンラインクラスの形式とニーズ

ピッツバーグ大学情報学校図書館情報学専攻は、遠隔教育に力をいれており、多くのクラスがオンラインで受講可能です。このため、遠隔地で在住の学生もおおく、授業によってはカリフォルニアやはてはニュージーランド在住の学生が登録していることもあるようです。例えば、日本でも有名なピッツバーグ大学医療センター(UPMC)を抱えていることもあり、医学図書館分野のコースが有名なので、これに関連するクラスには遠隔地の学生が登録しています。
 
オンラインで受講可能なコースには2種類あります。

1つは、オンラインスチューデントとオンキャンパススチューデントの両方が共存している形式です。授業ごとにやりかたは色々工夫されていますが、基本的には、対面の通常のクラスをビデオで撮影し、それを翌日にはオンラインに掲載し、オンラインスチューデントはそれをみてクラスに参加するという形式です。私が受講したクラスの中では、半分がこの形式のものでした。

もう1つは、全員がオンライン・スチューデントのみのクラスで、一部のクラスがこの形式をとっています。私自身は、せっかくアメリカにいるので、このような授業はあまり取りたくないなとおもっていたのですが、経験のためにもと、1クラス、図書館経営の授業をこの形式でとりました。
 
以下この授業を紹介します。
 
オンラインクラスの実際-図書館経営論

図書館経営のクラス、正式名称は、”Managing Libraries & Information Systems & Services in Changing Environments"で、全員必修の基礎科目となっています。2009年春はオンラインのみの提供で、登録者数は、40名強です。

内容としては、図書館を取り巻く社会環境の変化が、図書館と利用者にどのようなインパクトを与えるのかを理解し、それをもとに実際の図書館経営を実践的に考えていこうというものです。具体的には、経営理論の理解、戦略的計画立案の重要性の理解とその計画立案のスキルの習得、資金調達のスキルの習得、予算管理の習得、利用可能な経営資源と業界団体を知ること、協同プロジェクトにようする対人コミュニケーションの技術の向上、などです。並べて書くとお題目が並んでいるだけのようですが、実際のクラスはかなりこれに忠実で、”スキルの習得”と書いているものは、本当にそのスキルを習得したことを、レポートなどを通じて証明することが求められます。
 
インストラクターは、スーザン・アルマン博士で、ピッツバーグ大学の遠隔教育を早くからリードしてきた人で、このテーマで何本か論文も書いています。学生に対する要求事項が大量・多岐なので、学生からはちょっと恐れられています(笑)が、非常に入念にクラスが編成されていて、感心させられること多々です。
 
課題の内容(カッコ内は評価対象となるアウトプット)は以下のとおりです。

  1. QUOTABLE QUOTES: 用意された有名な引用文について論じる(小レポート)
  2. MANAGEMENT STYLES: 著名な経営理論家・実践家の経営理論・哲学を論じる(小レポート)
  3. PROFESSIONAL ASSOCIATION ASSIGNMENT/INTERVIEW: 現職図書館長や経営人にインタビューする(中レポート)
  4. HOT TOPIC PRESENTATIONS:図書館経営分野のホットトピックについて3,4人のグループでプレゼンを作成し、クラスに提示し、一週間オンラインディスカッションをリードする。(プレゼン、ディスカッションリーダー、ディスカッション)
  5. MANAGEMENT PORTFOLIO: 実在もしくは仮想の図書館の、実際もしくは仮想のマネージメント・ポートフォリオを、3,4人のグループで作成する。(大レポート)
  6. GRANT PROPOSAL: 実際あるいは仮想の資金調達ニーズを設定し、その資金調達のためのプロポーザルを作成する。(大レポート)


2つのグループプロジェクトでは、グループメンバー間の契約文書を作成し、コミュニケーション手段、スケジュール、分担などを事前に決めるところから始まり、プロジェクト自体が、マネージメントの実践練習であり評価対象となっています。グループが崩壊すれば即単位喪失らしく、先の学期にとった友人は、これにはまってしまい卒業が延びたそうです。。実社会と一緒で、働かない人はほんとむかつくほど働かないので、結構どこのグループも衝突があるようです。

ホットトピックは、毎週持ち回りになっており、学期の間に1トピックを担当します。テーマは以下のとおりですが、最初の2週で”紛争”解決と、チーム構築が設定されているのが興味深いところです。実際、この2週のプレゼンはパワーポイント40スライド+ビデオつきという気合の入ったもので、これが学生の一種の共通言語となり、その後のプロジェクトマネジメントに大きく影響していました。(マネージメントポートフォリオのほうのグループプロジェクトで、私の入ったチームで、1人が働かず、もう1人がぶちぎれる、という”紛争”が勃発してしまったのですが、おかげさまで何とか紛争は収まりました。)


  • 1週目:紛争解決
  • 2週目:チーム構築
  • 3週目:多様性
  • 4週目:電子化
  • 5週目:資金調達
  • 6週目:図書館建築
  • 7週目:ネットワーク
  • 8週目:スタンダード
  • 9週目:アウトソーシング
  • 10週目:経営倫理


難しいのは、このコースがオンラインのみであるために、まったく学生同士が顔もバックグランドも能力もしらないまま、コミュニケーションをしていくところです。インストラクターいわく、オンライン環境で仕事をしなくてはいけないという”社会環境”を意識したものだそうですが、ほんと大変です。私の経験の限りでは、グーグルのメールアカウントを全員が取得し、共有ドキュメントをフル活用しながらやるのが一番すんなりいく形で、グーグル嫌いも説得されて使うようになっていました。(他の授業でグーグルのアカウントを強制的に取らせる授業があるので、学生のグーグルアカウントの保有率は非常に高いと思われます。一度、とある授業で挙手する機会があり、9割方手をあげていました。)

私は資金調達を担当したのですが、プレゼン作成はともかく、ディスカッションリーダーが大変でした。ディスカッションは、クラス40名がA、B2つのグループに分けられており、それぞれ20名ほどのメンバーのところに、作成したプレゼンを提示します。A、Bそれぞれの中、20名ほどがプレゼンにああだこうだと意見をいうので、ディスカッションリーダーは、それに対し回答を提示したり、逆質問したり、誘導したりしながらディスカッションを構築していきます。チームメンバー4人のうち3人がAに所属し、私だけがBだったので、1人でこの役をはめになり、1週間の責任期間で胃がいたくなりました。これも全部モニターされていて、評価対象。疲れます。

学生間の紛争からその解決までも含めて、経営の様々な側面が直接的・間接的に経験されるように仕組まれている、このクラス。考えたスーザンを尊敬します。
 
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図書館情報学校の生活

2007年秋から2009年春にかけて、4学期間に渡って、ピッツバーグ大学図書館情報学校に在籍してきました。2006年の夏から本格的な準備が始まったので、思い起こせば3年近い時間を、このために費やしてきたということになります。
 
以下、あまり数値を交えず、私のみた図書館情報学校の姿を、印象ベースで手短に紹介したいとおもいます。
 
詳細はこちらから。
 
ライブラリースクールの存在感
 
日本のみならず、多くの国で非常にマイナーな学問領域ですが、米国では、図書館員という肩書きを名乗れる図書館員になるためには、図書館情報学の修士号をとることが必須ですし、図書館員という職能集団自体が社会のなかでなかなかの存在感があるので、図書館学も盛んです。
 
渡米した当初、アメリカ人と出会い自己紹介で専攻をライブラリーサイエンスと紹介すると、おぉ!という反応が返ってきました。広く認知されている学問領域であり、また興味をもたれている領域であることを、肌でかんじました。逆に、海外からの他学部留学生と話をすると、へぇ、そんなのがあるんだね、とか、アメリカにきてから知ったよその学問、という反応です。日本人留学生に限っては、なにそれ?なにするの?という反応が大半で、それは日本にいてもアメリカにいても変わらない感じですね。
 
ライブラリースクールの雰囲気
ピッツバーグ大学の場合、正確にはSchool of Information Sciencesという名称で、この情報科学学校の中に、図書館情報学、情報学、テレコミュニケーション学の3領域があります。情報学領域には、中国、台湾などからの留学生がたくさんおり、またテレコミュニケーション学領域には、中東からの留学生がたくさんいて、いい感じで混じっていますが、図書館情報学領域は圧倒的に白人ばかりで、留学生は毎年数えるほどしかありません。さらに、図書館情報学の中でも、アーカイブ系には男性学生がたくさんいますが、図書館系には、圧倒的に女性ばかりという印象です。
 
私と同じ時期に入学した留学生には、中国からの若い学生がいましたがみんな情報学のほうに専攻変えしてしまい、残ったのは韓国の国会図書館からの留学生と、私だけ、というような状況でした。英語ノンネイティブはほんと数えるほどです。アジアは顔ですぐにわかりますが、そのほかひっそりクラスにいる東欧や中南米からの学生を見つけるとうれしくなります。
 
修士号取得への仕組み
ピッツバーグ大学図書館情報学校修士課程の場合、卒業するためにとらなくてはならないクラスの数は12クラス。1学期にとる授業は3クラスから5クラス。ネイティブでフルタイムで大学院生では5クラスとる学生もおり、実質1年で卒業することも可能になっていますが、留学生は、3クラスを4学期とるというのが一般的です。授業1クラスをとると、そのために教室外で週10時間程度費やすことになるので、3クラスとると、週休2日で働いているのと同じくらいの労働量になります。博士の授業をとることも可能で、これをとると労働量がどんと増えます。どのくらいの時間を費やすのかはもちろんその人それぞれの考え方ですが、私のまわりにいた人たちは、ネイティブも留学生も、なんとなくそんなリズムでいる人たちが多かったような気がします。

私の場合は、2007年秋3クラス(プラス英語のクラス)、2008年春4クラス(内1つは博士、1つドロップ)、2008年秋4クラス(内1つは博士)、2009年春3クラス、という構成になりました。博士のコースでとったのは、質的調査法と情報政策で、とくに情報政策は今年退官される元ディーンのクラスでタフで有名なもの。週30時間くらいをこれにつぎ込み、寝ても明けても政策政策唱えているモンクのような生活になってしまいました。

とったクラスの一覧は以下のとおりです。

  • 2007年秋
     Understanding Information
    Retrieving Information
    Digital Library
  • 2008年春
    Organizing Information
    Marketing & Public Relations for Libraries
    Qualitative Research
    Independent Study
  • 2008年秋
    Introduction to Information Technologies
    Library & Archival Preservation
    Service for Adult
    Information Policy
  • 2009年春
     Managing Libraries & Information Systems
    & Services in Changing Environments
     History of Books, Printing, Publishing
    Government Information Resources & Services


クラスのタイプ
クラスの形式としてはは、
・大人数のものと、少人数のもの
・遠隔講義のものと、教室でおこなわれるものと、複合型のもの
・講義形式のものと、セミナー形式のものと、それ以外
で3つの軸で分類けられます。

大人数のクラスは、ほんとうにわらわらと人がいます。日本の図書館情報学大学院では想像できない姿かもしれませんが、60人超の人数が登録しているクラスもあります。このようなコースは多くが基礎科目で、入学したてのきゃんきゃんした人たちもおおいので、雰囲気は、日本の学部レベルの司書課程と若干似たようなところがあります。

少人数のクラスは、10人くらいの規模のものもあります。アメリカの大学生はよくしゃべるので、3時間のクラスの半分くらいは学生の話を聞いている感じです。もっとも、多くが現職・前職ありの人たちで、平均年齢は30歳を超えるくらいだそうで、日本の社会人大学院のような雰囲気です。セミナー形式だともっと大変で、教授よりも院生のほうがよくしゃべっています。

ピッツバーグ大学の場合、遠隔授業が充実しているのも特徴です。基礎科目も含め講義形式の授業はほとんどビデオで撮影されており、オンラインにビデオがアップされます。オンライン授業の登録者は多く、教室に来ている人の数と同じくらいがオンラインの授業もありますし、またオンラインのみで提供されている授業もあります。オンラインの授業は、学生は掲示板やブログやWikiなどに発言を書くことをもとめられ、20人もオンラインがいると、結構な分量の文章がオンラインに書き込まれます。クラスによっては全部読むことが求められるので、英語を読むこと自体勉強のレベルの私には、しょーじき、とても苦痛。。
 
読書量
アメリカの院生のリーディングの課題の量はハンパじゃないと聞いていましたが、私のとったコースはそれほど深刻なものはありませんでした。1週間に読む量は、1クラスにつき、多くて50ページくらい、少ないクラスでは1章20ページくらい、というところです。一番少なかったのはインフォメーションテクノロジーや電子図書館など、技術系の授業。一番読書量が多かったのは博士セミナーの情報政策で、「すくない量の文章をじっくりよんでじっくり考えてほしい」といいながら熟読用に50ページほどを毎週、というものでした。
 
書く量
書く量は、レポートと、オンラインに発言として書き込んでいくものとが主です。レポートは、参考文献つきのフォーマルなもので、レポートの分量は、期末レポート的なものとして大体20ページを求めるものが多く、それ以外に、ちょこちょこと数ページから10ページくらいの、短かいレポートをかきます。

日本語で出版レベルの文章を書いた経験から、日本のこの業界でおよそ出版できるレベルというのはわかっているつもりですが、レポートはそのレベルを書かないと、悲惨な点数がついてきます。最初のうちは、大学のレポートだし、、と少しあまくみていたのですが、留学生といえども文法ミスなどでも点数をひかれますし、内容で至らなければ容赦なしです。痛い目にあいました。
 
振り返ると結構な分量を書いたことになります。日本ではこんなに書いたかしらん。。
 
オンラインの発言は、1回に求められる分量は200ワードとかそんなものですが、多くのクラスで毎週のように書くことが求められます。最初のころは手元にバックアップをとっていなかったのですが、最後の学期、手元にまとめてみたところ、結構な分量になっていて、ちょっぴりうれしくなりました。
 
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大枠はこんな感じです。クラスごとに印象深かったことがそれぞれあるので、それはまた別の記事に書きます。
 

2009/03/14

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ACRL、全国大会を”グリーン”へ


ACRL(米国大学研究図書館協会:Association of College and Research Libraries)の第14回全国大会が3月12日から15日までワシントン州シアトルで開催されています。今回の全国大会のコンセプトは、”グリーン”とのことで、環境にできる限り配慮した会議運営を目指しています。
 
詳細はこちらから。
 
http://www.ala.org/ala/mgrps/divs/acrl/events/seattle/green.cfm
 
米国においては、環境問題に関心の高い人は本当に関心が高く尊敬できるのですが、正直、そうでない人が多すぎる、と常々感じていました。日本で普通の人が普通に理解し実践していることが、ぜんぜん認識もされていなければ、理解もされていないというのが、私の率直な印象です。考えているグループはとても考えているのも確かですが、新政権になっての、テレビ、雑誌、新聞などのメディアにおける環境問題の露出のアップは顕著なものがあります。
 
そんななか、この第14回ACRL全国大会が、あくまで図書館の会議であり環境問題を話し合うための会議ではないのにもかかわらず、”グリーン”をコンセプトにすえそれを売りにして会議を盛り上げているのは、とても興味深いものがあります。
 
実際にどんな”グリーン”が?
 
会議運営において考えられるあらゆるものに挑戦しています。例えば・・・

・会議参加者に配布するトートバッグは、使用している繊維の51%がリサイクル品のものにしました。(アメリカの図書館業界の大きな大会では必ずといっていいほどトートバック渡されます。ちなみに、このトートバックのスポンサーはEBSCOでした。)

・会議期間中に提供する食べ物や飲み物について、できるかぎり環境に優しい食品を提供しています。(アメリカの図書館業界の会議ではとにかくたくさんの食べ物や飲み物が提供されるので、結構なインパクトがあります。例えば、水のペットボトルについても、1人が一本もっていけるようなものをやめ、大きなペットボトルにし、ガラスのコップを用意する、といったようなことをやっています。)

・ごみを減らすための取り組みの一つとして、ひとりひとりにプラスチック製の蓋つきマグカップが提供されている。このプラスチックは、100%とうもろこしを原料として作られているものを使用しています。(このマグカップのスポンサーはInnovative Interfaces社でした。)

・プレゼンテーションに紙の配布資料をなるべく使わないように薦め、その代わりにオンラインにすべての資料および記録を掲載するようにしています。

・プログラムなどの必要な紙製品には再生紙を使い、また、インクも大豆から作られたものを使用しています。

・ホテルについて、環境への取り組みを行っているところに限定しています。(アメリカの会議では会議参加者に指定のホテルの割引を提供しますが、このホテルの手配にあたって、リストを用意し、どのホテルでどのようなグリーンサービスがあるか一覧できるようにしています。)

・会議参加者全員に4分砂時計を配っています。(最初、これは何のためかと思ったのですが、説明によると、シャワーの平均は平均8分だそうで、それを4分にして節水にとりくもうというものだそうです。)

・展示会に出展している企業に、自社の環境問題への取り組みをアピールするようにすすめています。(実際多くの企業がアピールしていました。)

・展示会出展者および出席者から、あまった資料や本を集め、Better World Booksに寄付しています。

・グリーンな会議運営に関するブースをもうけ、情報提供を行ったり、グリーンをテーマとしたセッションの時間を設け、講師を招いて講演会を開いたりしています。
 
インパクト?
日本の会議では、特に強くアピールすることなくやっているものもありますが、このように列挙すると、1つの会議でできることというのは実にいろいろとあるものだということに気づかせられます。特に、この会議が、全国大会であり、3000人以上の参加のあるものであることを考えると、そのインパクトは小さくないとおもいます。しかもおしゃべりで活動的で情報の伝達を生業としているアメリカの図書館員なので、整理されて共有された情報は、かならずいろいろなところに伝播して、波及効果もみこめます。
 
Go Green.
 

 

2009/03/12

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全館リニューアル、新しいシアトル公共図書館27館をめぐるスタンプラリー:体験レポート

シアトル公共図書館では、"Library for All"を掲げ、1998年から中央館及び全26分館の新築・改築を行いました。2008年に全ての工事が終了し、無線LAN環境も全館に配備され、新時代に対応するシアトル公共図書館システムが完成しました。これを大事業の完了を記念して、市民の税金や寄付金により出来上がった図書館をより多くの市民に触れてもらうべく、全27館をめぐるスタンプラリー、”パスポート”プログラムが企画され、実施されました。
 
シアトルを訪問する機会があったので、1日半かけて体験してみました。
 
詳細はこちらから。
http://www.spl.org/default.asp?pageID=audience_current_featuresdetail&cid=1219360118046
 
パスポートプログラムとは
パスポートプログラムは、全ての図書館の写真と情報が掲載された”パスポート”を発行し、市民にハイキングや自転車、公共交通機関などを使ってスタンプラリーをしてもらおうというものです。

写真が、そのパスポートです。本物のパスポートよりもひとまわり大きめです。このパスポートを中央館ほか全館のインフォメーションカウンターにおき、希望する人がだれでももっていけるようにしました。パスポートには、全館の外観写真と2,3枚の内装写真、そして新たに開館した日付や図書館の広さ、設計者や建設施工者の名前などが掲載されています。もちろんスタンプを押す場所もあります。
 

 
ちなみに、シアトル公共図書館は、貸出返却とレファレンスが完全に分離されており、レファレンスカウンターが”インフォメーションカウンター”です。インフォメーションカウンターには、図書館員がついていますので、市民にパスポートをもらうとき、パスポートにはんこをおすとき、図書館員は市民とお話することができます。図書館員にとっては、自分たちの図書館をアピールする、また図書館員の仕事をアピールする、絶好の機会というわけです。
 
この企画に対する市民の関心は高く、実に多くの市民がパスポートを手にとり、スタンプラリーに参加しました。参加形態は様々で、ハイキングとして楽しんだ人、自転車でまわった人、バスでひとつひとつまわっていった人などがいました。中には、オーストラリアやイギリスなど海外からきてパスポートをもっていった人もいたそうです。また、この企画に感動した図書館大好きの地元のウルトラマラソンランナー、サム・トンプソンさんは、1日全館走破に挑戦し、話題となりました。
 
実際すべてのスタンプを集めた人も数多くおり、1月7日に開催された終了者を表彰するイベントでは、80人ほどの終了者が集まりました。その中のお1人、ブレンさんは95才のおばあさま。全館踏破を成し遂げたおばさまに、パスポートプログラムで何を一番楽しんだのかときいたところ、"Having a mission and completing it was very important to me, because you see, I'm 95,"とおこたえになったそうです。
 
パスポートプログラムを紹介した地元テレビ局のビデオが以下のサイトで見られます。
http://www.spl.org/default.asp?pageID=audience_current_featuresdetail&cid=1231913922017
 
また、終了者の集まった記念イベントの様子は以下のサイトで見られます。
http://www.seattlechannel.org/videos/video.asp?ID=3070839&start=23:32
 
せっかくシアトルにきたので体験してみた
シアトルに来たので、せっかくなので体験してみました。
 
サムさんの挑戦にちょっぴり敬意をはらい、最初と最後だけは自分の足を使おうと、朝の開館時間10時にあわせてホテルから中央館まで走り、パスポートをもらいました。最短でも100キロ以上あるコース。もちろん走るのは不可能なので、その足でレンタカー屋さんに行き車をかり、車でまわりました。
 
パスポートをもってカウンターにいき、スタンプがほしいというと、大げさすぎるでしょ、とおもうくらい大きなリアクションで、「もちろんよ!私たちの図書館にきてくれてありがとうね!」と迎えてくれました。

首からぶら下げた一眼レフを持ち上げながら、何枚か写真を撮っていい?と聞くと、「プリーズ!」とのリアクション。あそこの壁にかかっているのはだれだれの作品よ、とか、外壁が特徴的なのよ、とか、むしろどんどん撮ってくださいなという姿勢。なんでそこまで?と聞くと、「新しい図書館を写真におさめたいというリクエストは数知れないし、それに市民のものだから、あたりまえだと考えているのよ。」と。全館図書館員が合意したポリシーとしてしっかりと根付いていること、そして、「ことなかれ」ではなく、原則OKにしたうえでマナーの文化を創っていくという能動的な姿勢、あらためて感動してしまいます。
 
市民に気持ちよくスタンプラリーを楽しんでもらうということのために、考えられる全てのことを考えつくしているというかんじがします。スタンプは各図書館のオリジナル。例えばグリーンウッド分館は、林をあしらったデザインのハンコで、緑色のインクをつかったりして、スタンプをおすときにスタンプのデザインについてちょっとしたトークをしてくれたりします。
 
図書館員によるパスポートプログラムへの感想
 
あまりにもすべての図書館員がこのプログラムを楽しんでいるようなので、途中、図書館員にこのプログラムをどう思っているのかたずねてみると、すばらしい企画だよね、と即答でした。
 
ハイポイント分館の図書館員のデニスさんが語るには・・・
 
港町として世界中から移民が入り、みなとてもフレンドリーなシアトルの町だけれど、それでも慣れ親しんだ地域に閉じこもりがちになってしまうもの。あたらしい移民も、同郷者が集まる居心地のよい地域に入り込むと、その地域から一歩もでないで暮らすようになることも多々ある。せっかくすばらしい町なのに、その町の一部しかしらずにすごしてしまうのはとても残念なこと。

パスポートはもちろん、それをもって世界のいろいろなところにいき、自分の目を開き、あたらしいものにふれ、それまでとことなる体験に自分を発見していくことができるもの。シアトル公共図書館のパスポートも同じこと。このパスポートをもって図書館に来る人たちは、図書館だけを訪ねているのではなく、知らなかった地域をあるき、写真をとり、地域の人と話し、そしてあたらしいものに出会っている。
 
それが一番すばらしいことだと思うんだ。

・・・と。
 
 

シアトルの町は、他の町に比べるとはるかにコミュニティが分断されていない感じがしますが、それでもまだまだ目指すべき目標はあるようです。
 
デルリッジ分館のシャノンさんが語るには・・・

シアトルの町には、新しい移民もおおいし、その本国の状況をたどっていくと、そもそも図書館というものが存在しない国からきている人たちもたくさんいる。例えば、アフリカ西部から来た利用者の人たちの話では、こちらに来る前の段階では図書館というものがなく、そもそもそのコンセプトも知らなかったみたい。彼ら彼女らにとっては、私たちの図書館が初めての図書館だし、私たちの図書館を通じて図書館という概念を理解しているの。
 
・・・と。
 
地域の小さな一分館の活動が、もしかするとアフリカ西部の図書館のモデルにもなる。そのことまで意識しながらサービスをしているシャノンさんの姿勢。”パスポート”というプログラムがコミュティの融和を産み出す。図書館の宣伝を遥かに超えて、コミュニティ構築まで意識しながらパスポートをもつ人を迎えるデニスさんの姿勢。

小さな質問から、期せずしてシアトル大好きなシアトルライブラリアンの心意気にふれてしまいました。
 
どのくらい市民に受け入れられたのか

どのくらい市民に受け入れられたのかをはかるのは、きっと市民がどのくらい楽しい話題として図書館やパスポートを取り上げているかということなのだとおもいますが、偶然にも、このプログラムがいかに市民に受け入れられていたかを感じさせられるシーンに何度かあうことができました。
 
最初に訪問したビーコンヒル分館の建物の外で写真を撮っていると、歩いてきたちょっとメタボのおじさんが、この壁のスレートおもしろいよなぁ、と話かけてきました。とても当たり前のように図書館通らしく、どこどこの分館もいい、本館はもちろんすばらしい、シアトルはすごくいい町なんだと熱くかたられてしまいました。道でこんな人にあったのは初めてで、とても衝撃でした。
 

  
11番目に訪問したチャイナタウン分館でチャイニーズの図書館員に話を聞いて、別れ際、後いくつのこっているの?と聞かれ16だと答えると、そばにいた利用者のおっさんにニヤニヤと「そりゃーたいへんだべぇ」という感じで拍手されました。周りで勉強したりパソコンさわっていたりする利用者からもニヤリと笑いがもれていました。
 

 
22番目に訪問したバラード分館では、妊婦の方が近づいてきて、「プロの写真家さんですか?いやその、パスポートをもって写真を撮られていたので。。。」と丁寧にきかれ、いやいやちがいますよ、ただの素人です、でもライブラリアンです、というと、「あぁ、そうですかぁ!」と根堀葉堀素性を聞かれてしまいました。そして最後には、握手までされ応援されてしまいました。
 

 
中央館で写真をとっていると、手を怪我して休業中という感じのおじさんが近づいて、ひくい声で、「上、写真撮ったか?」と聞いてきました。最初きいたときにはおこられたかとおもうようなトーンだったのですが、「ちょっとついてきな」といわれたのでついていくと、上を指差して、「あれの写真をとらなくちゃぁなぁ」と、お気にいりの撮影スポットを教えてくれました。
 
あちこちで図書館が日常の話題になっている町。図書館が核ととなって話題が生まれている町。それも、借りられた本の話だけではなくて、生活のひとこまの話として図書館自体がトピックになっている町。スタンプラリーの間に触れた光景は、ほかの町ではあまり感じたことのないものでした。
 
触れた世界は断片の断片かもしれませんが、市民の図書館とはこういうものだと、つくづく感じさせられました。
 
結果、一応踏破
100キロほどのドライブと、10キロほどのウォーキング&ジョギングで、足早に全館踏破しました。そしておもったこと。この企画、おもしろい!単純ですが。
 
というわけで、写真スライドショー
 

 

2009/02/15

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ピッツバーグ公共図書館の音楽コレクションを紹介するビデオ

ピッツバーグ公共図書館のファーストフロアで働く友人から、ついに!と楽しげなメールが届きました。ピッツバーグ公共図書館(CLP:Carnegie Library of Pittsburgh)の音楽資料を紹介するビデオを作成し、ついにYouTubeにアップしたとのこと。主演女優です。
 
詳細はこちらから。
 
 
愉快なビデオ、愉快な図書館員たちです。ちなみに主演女優のボニー、以前日本で英語を教えており、CLPでは日本語の会話クラブなども立ち上げるなど、多彩に活躍しています。
 
コメディタッチなビデオですが、実際、CLPの音楽資料コレクションは、公共図書館の音楽資料コレクションとしては全米でも屈指の実力があります。1938年に結成された”音楽図書館友の会”が、独自の資金調達活動や資料提供を通じて、コレクションの形成を側面から支援しており、また図書館側も音楽資料専門の図書館員を抱え専門性の高い情報ニーズにもこたえています。

主な音楽資料コレクションとしては、音楽関係図書や楽譜のコレクションが85,000件、録音資料28,000件、映像資料1,700件、雑誌その他定期刊行物が400タイトルを抱え、さらにピッツバーグエリアの音楽、音楽家に関する独自作成の索引も作成維持しています。

またその専門性の高い資料を構築しているカタロガーは、OCLCのレコードにも多大な貢献をしており、2007年8月にはカタロガーのHerrold氏が、OCLCの"Music OCLC User Group(MOUG)"から、表彰されています(プレスリリース)。

音楽資料は、館内所蔵資料だけにとどまらず、オンラインデータベースも充実しています。索引データベースについては、館内アクセスのみのものとして"Index to Printed Music”、"The Jazz Discography"、"JSTOR"、"Music in Print"、またリモートアクセスも可能なものとして"Music Index"、"Oxford Music Online"を提供しています。また、ストリーミング配信のデータベースについては、"African American Song"、"American Song"、"Classical Music Online"、"Contemporary World Music"、"Naxos Music Library"、"Naxos Music Library Jazz"、"Smithsonian Global Sound"、などを契約提供しています。これらはほぼリモートアクセス可能で、利用者は自宅から音楽を楽しめます。
 
雑感
分野ごとに、その分野をリードする実力ある公共図書館が、国内に数館ずつでも存在すると、その分野のサービスは大きく発展するんでしょうね。マンガとかゲームとかのサービスの発展モデルは、こういうトラディショナルな分野の発展と共通している部分がある気がします。
 
参考:
音楽資料コレクションの概要についてはこちらから→概要)。
 

2009/02/11

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図書館の資金調達とGuideStar

米国の企業財団、個人財団などは、環境、教育、福祉など各分野の非営利団体に豊富な資金提供を行っていますが、彼らが提供先として団体を選ぶ際に使用するツールの1つに、GuideStarがあります。現在170万団体ほど非営利団体がこのデータベースにプロファイリングされており、年間のアクセス数は1000万件以上で、この分野では並ぶもののないデータベースとなっています。米国の公共図書館も多くが登録・参加しており、彼らにとっても重要なツールとなっています。

詳細はこちらから。
 
GuideStar
http://www.guidestar.org/
 


米国の図書館は、米国の他の非営利団体と同様に、実に積極的に、独自に資金調達を行っています。税金を核とする安定した財源を運営資金にあてる一方で、コンピュータを導入するのにも、貴重資料をデジタル化するにも、夏の読書プログラムを提供するにも、いいサービス、いいプログラムを提供するために、個人、企業、政府からの資金調達の道を探っています。図書館情報学の講義においても、資金調達は非常に熱心に扱われるトピックで、助成金を申し込むための企画書を書きなさいというような課題も、頻繫にでます。例えば、見聞した限りでも、例えば、

  • 新規の成人向けサービスを設計しグラントプロポーザルを書きなさい
  • 環境変化にさらされている大学図書館の運営者になったことを想定してグラントプロポーザルを書きなさい
  • 古文書の保存とマイグレーションを計画しグラントプロポーザルを書きなさい
などなど、現場を反映した実践的なレポート課題がだされています。

資金提供者の検索を助けてくれるツールも充実しており、などのほか、地域レベルでのオンラインツールなども存在し、図書館の資金調達に活用されています。地域レベルのツールとしては、例えばペンシルバニア州ではPennsylvania Foundations Onlineなどがあります。
 
このような、お金をもらう側からの能動的アプローチのほかに、お金を出す側からもアプローチがあることもあるようで、図書館も積極的に情報を提供しhttp://www.blogger.com/post-create.g?blogID=6237320561431042442、受動的な資金調達の機会をまっています。情報提供の1つは、自分のところのウェブサイトで、年報やニュースレターや各種の寄付受付の情報を提供しています。もう1つは、国レベルの非営利団体情報のポータルともいうべきGuideStarへの情報提供があります。例えばピッツバーグの公共図書館Carnegie Library of Pittsburghも、ミッションや活動内容の要約などの情報を提供し、資金提供先として選ばれるようアピールしています。図書館によっては、図書館友の会や、図書館基金として情報を提供していることもあります。正確にどれだけの図書館がGuideStarに情報を提供しているのかわかりませんが、数千館はあるようです。(正確な数はコード検索をすれば抽出できるとおもうのですが、カテゴリーが、Library, Library Scienceと大きなくくりになっていいるので、ちょっとめんどい・・・)
 
非営利団体が安全な資金を安定して獲得できることは、非常に重要なことだと思います。GuideStarは、それを実現する上で大きな役割を担っており、図書館にとっても、図書館が寄付先として認知してもらい、さらに決定してもらうための、重要な媒体の1つとなっているようです。
 
参考:
GuideStar バズ・シュミット氏来日セミナー (国際交流センター)
http://www.jcie.or.jp/japan/cn/n02/guidestar.html
 

2009/02/10

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政府印刷局(GPO)の統合デジタルシステムFDsys、提供開始(一次)

米国政府印刷局(GPO)が2004年から着手してきた統合デジタルシステムFederal Digital System (FDsys)が、2009年1月15日から利用できるようになっています。

詳細はこちらから。
 
FDsys
http://fdsys.gpo.gov/fdsys/search/home.action
 
今回の機能リリースにより、特に利用の多い以下のコレクションが利用可能になっています。

  • Congressional Bills (1993-)
  • Congressional Documents (1995-)
  • Congressional Hearings (1995-)
  • Congressional Record (1994-)
  • Congressional Reports (1995-)
  • Federal Register (1994-)
  • Public and Private Laws (1995-)
  • Compilation of Presidential Documents (1993-)

特にこの中の”Compilation of Presidential Documents”については、オバマ政権のホワイトハウスとの連携により、従来週ごとに行われていた新規情報の追記をさらに短縮し、日ごとに行われるようになりました。今後GPOAccessから利用できた資料はすべてこちらに統合され、最終的に50ほどのGPOのコレクションが提供されることになります。

このFDsysは、より効率的かつ効果的な政府情報の出版、配信、アクセスの提供をめざし、出版機能、検索機能、保存機能、版管理機能などを統合することになっています。議会、政府省庁等から電子データを受け取り出版し、さらに連邦政府寄託図書館制度を通じた図書館への配布までの作業も同一システムで行われるようになるようです。
 
FDsysは、5回に分けて機能リリースすることを予定しており、2009年中だけでもあと2回の機能リリースが行われる予定です。機能の新規追加や、新聞等による報道は、専用のブログでも情報が配信されています。
 
オバマ政権の目指すより透明な政府作りの不可欠な要素になるものとおもわれ、今後の機能リリースが注目されます。
 
参考:
GPO Launches 'Google' for Federal Docs (Washington Post, Feb 4)
http://voices.washingtonpost.com/federal-eye/2009/02/new_government_search_site_lau.html?hpid=news-col-blog

2009/02/09

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スクールハウスロック:法案が法になるまでの歌

米国議会で法案(Bill)が法(Law)になるまでのプロセスは、とても長いもので、多くの法案は法になることなく消えていきます。そんな、法案が法になるまでのことをうたった歌。
 
Schoolhouse Rock- How a Bill Becomes a Law


歌詞はこちらから。
 
http://www.songmeanings.net/songs/view/3530822107858665754/
 
ちなみに、法の成立過程と政府印刷局(GPO)による印刷・配布のタイミングをわかりやすく図解したポスターがあります。これは図書館が政府刊行物である法案・法を利用する利用者に配布できるよう作成されたもので、米国の(?)図書館はFDLPから依頼すると入手できます。
 
How a Bill Becomes a Law Poster

URL: http://www.fdlp.gov/component/virtuemart/?page=shop.product_details&product_id=16&flypage=flypage_images.tpl&pop=0&vmcchk=1
 
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[Private]ブログ改修メモ


  • 図書館ニュース&ブログ検索
    右カラムの図書館情報学ニュース検索をちょっと改修して、”図書館ニュース&ブログ検索”に。”図書館へ行こう”さんの図書館系ブログ集のリストをベースに、コンテンツ消失済みのブログと、メンテナンス等のためにアクセスできなかったブログを除いたものを、検索対象に追加。ブログでものを書くからにはせめてブログの検索をしてから書くかと、巨人の肩の上に立つの精神で。カスタム検索を作ってみて感じたのですが、図書館系ブログを束ねると、用語解説とアイデアと書評の宝庫ですね。

2009/02/07

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図書館PR賞:2009年のジョン・コットン・ディーナ賞の受賞館

アメリカ図書館協会の主催する賞の中でももっとも注目される賞に、ジョン・コットン・ディーナ賞というものがあります。夏の読書プログラム、ファンドレイジング活動、設立100周年記念イベントなどなど、その年もっとも卓越したPR活動を行った図書館数館に贈られるもので、受賞館には、各種の媒体でレファレンス情報源を提供しているH.W.WilsonのH.W.Wilson基金から5000ドルが賞与されます。
 
毎年興味深い活動を垣間見ることができ、楽しみな賞ですが、今年も受賞館が発表されました。
 
詳細はこちらから。
 
John Cotton Dana Library Public Relations Award
http://www.hwwilson.com/jcdawards/jcdwin2009.htm

PRって?
私は、PR=広報活動という訳出に慣れてきていたので、どうしても図書館側からの一方的な宣伝活動というイメージで考えていたのですが、PR(Public Relation)は、利用者である市民との関係構築のことであり、双方向的な意味合いが強くあります。実際、受賞館をみても、宣伝に長けていることもさることながら、市民と実質的な関係を築くことに成功した図書館が受賞されています。
 
今年の受賞館は、

  • バルチモア郡公共図書館(メリーランド州トーソン) - “Storyville: An Interactive Early Literacy Learning Center”
    2,250平方フィート(209平米)のお子様サイズの”村”をつくり、就学前の子供たちの読書の機会を提供した企画。全米的な注目を集め、8ヶ月間のイベント期間中に、5万人の来場者を集めた。

  • グインネット郡公共図書館(ジョージア州) - リーディングフェスティバル
    10月18日に開催されたリーディングフェスティバル。2回目の開催。50名以上の著者が招かれ4,500人以上が人たちが参加した、主に大人をターゲットにしたリーディングフェスティバル。地域の46機関の協力を得、また総額6万7000ドルのスポンサーからの出資を得た、企画に長けたイベント。

  • ヒューストン公共図書館(テキサス州ヒューストン) - “A New Chapter
    改装した中央図書館のグランドオープニングを記念したPRキャンペーン。2万人以上の来場者を集め、多くのメディアに報道されるとともに、新規の多くの利用者を開拓した。

  • マルトノマ郡図書館及び図書館基金(オレゴン州ポートランド)- “Campaign for a Lifetime of Literacy
    5ヵ年計画の双方コミュニケーション及びファンドレイジングのキャンペーン。図書館が子供のリテラシーのリーダーであり、またパートナーであることについての認識を高めることに寄与。夏のリーディングプログラムだけでも合計5万人の子供たちの参加を集め、また1200万ドルの資金調達に成功。

  • セントポール公共図書館(ミネソタ州) - “St. Paul-itics
    市民に選挙に関する情報を提供し関与を高めるダイナミックな企画を展開。様々な政治に関係する組織等と協力して、あらゆる年齢層をターゲットとした40のプログラムを開催。図書館のコミュニティにおける役割を変革し、市民の参加を集め、意識を高め、さらに図書館へのオンラインアクセスを増加させた。

  • イプシランティ地区図書館(ミシガン州) - “Second Annual Ypsilanti Songwriting Festival
    音楽と舞台芸能を通じて、従来図書館を利用していなかった人たちに、図書館サービスをアピールするユニークな企画。ティーンと18才から45才の男性をターゲットにし、実際参加者の75%は男性でしめられた。宣伝媒体としてMy Spaceを積極的に活用


 
個人的には・・・
セントポール公共図書館の選挙に関係したキャンペーンである”セントポーリティクス”が今年を象徴するキャンペーンだなと思いました。大統領選挙のために米国人の政治への関心がとても高まっていた2008年は、多くの公共図書館で大なり小なり選挙に関連する企画がみられましたが、偏りのない情報提供を追求する米国公共図書館が、積極的な情報提供を行うには様々な試行錯誤があったものと思います。その中でセントポール公共図書館の活動は、実に果敢に多様な活動を展開したようです。
 
例えばイベントとして、

  • 政治的シーンを描いた映画シリーズでは、"The War Room"、"The Manchurian Candidate"、"Dr. Strangelove, or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb"、 "Mr. Smith Goes to Washington"といった作品の上映会を開催
  • 講演会シリーズでは、”The Undecided Voter’s Guide to the Next President”の著者Mark Halperin氏、”The Citizen Solution: How You Can Make a Difference”の著者Harry C. Boyte氏、KSTP Eyewitness Newsの政治記者主任Tom Hauser氏などを招聘、
  • 候補者フォーラムでは、大統領選挙と同日に行われた議会選挙の候補者の地区別フォーラムについて、会場提供や、広報活動の補助を実施、

を行っています。
 
さらに、選挙をテーマとする図書館独自のブログを解説し、様々な情報提供を行っています。

このほか、これはほかの図書館にも多くみられますが、”図書館らしく”選挙や政治・社会に関するブックリストを作成しウェブサイトに公開したり、投票所を確認するための2次情報を提供したり、子供たちと一緒に選挙を学ぶための2次情報を提供したりと情報提供を行っています。
 
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豊かな北米の東アジア図書館文化を訪ねて:ワシントン大学(セントルイス)東アジア図書館(現地レポート)

北米の研究図書館には、50機関ほど東アジア(いわゆるCJK-China,Japan,Korea-)のコレクションをもつ図書館があります。大学図書館にある東アジア図書館は、東アジアに関する研究者、留学生、そして様々な情報ニーズをもつ学生たちにサービスを提供しています。また、米国議会図書館、ニューヨーク公共図書館の東アジア資料室は歴史を感じさせるもので、部屋に入るとそれだけで感動を覚えるほどの場所です。
 
そんな東アジア図書館の1つ、ワシントン大学(セントルイス)の東アジア図書館を、先日訪ねてみました。
 
詳細はこちらから。
 
Washington University Libraries: East Asian Library
http://library.wustl.edu/units/ea/
 
ワシントン大学と邦訳される大学は、現在、ワシントン州シアトルにあるUniversity of Washington(U.W. ユー・ダブ)と、ミゾーリ州セントルイスにあるWashington University(Wash U ワッシ・ユー)の2つがあり、いづれも東アジア図書館をもち、日本人ライブラリアンが活躍しています。今回訪ねたのはワッシ・ユーのほう、ワシントン大学(セントルイス)です。
 
セントルイスは、大陸横断鉄道やルート66などが通る、西への交通の要所として発展を遂げてきました。その歴史を象徴する全米一の高さを誇るモニュメント、ゲートウェイ・アーチがあります。ワシントン大学(セントルイス)は、アーチのあるダウンタウンの西側の地区にあり、美しいゴシック調のキャンパスをもつ大学です。
 
ゲートウェイ・アーチ

 
ワシントン大学キャンパス

 

 

 

 

 
数年前に改築されたオリン図書館(中央図書館、John M. Olin Library)

 
東アジア図書館
広大なキャンパスの一角の、同じ色調のたてものの一角に東アジア図書館はあります。オリン図書館からは徒歩3分ほど離れた別の建物です。外から一見すると小さそうですが、中に入ると外観以上に格調高き内装に目を見開いてしまいます。
 

 

 

 
所蔵数は、書籍、製本済み雑誌だけでおよそ15万冊、その他CD-ROM、マイクロフィルム、マイクロフィッシュなど様々な媒体の資料を所蔵しています。中国語、日本語、韓国語で書かれた資料がほとんどで、英語で書かれた東アジア関係資料は、オリン図書館のほうにあります。
 
閲覧室と向かい合うようにある開架書庫には、仏教、文学関係をはじめとする日本語資料がそろっているほか、なぜか、誰かが寄贈したのか、”夏子の酒”もそろっていました。
 

 
東アジア図書館は、主にワシントン大学(セントルイス)の東アジア研究の研究者に対してサービスを提供していますが、この美しく格調高い内装は学生にも愛され、東アジア研究とはあまり関係のない学生たちも多く勉強をしにくるそうです。確かに、こんな図書館がそばにあれば、ずっと居続けたいとおもいます。
 
感想とお礼と
北米の東アジア図書館のその豊かな姿は、まだまだ日本の図書館からは見えていないものだとおもいます。私自身、こちらにくるまでは話には聞けどイメージのわかない世界でした。幸にもいままで数館の東アジア図書館を訪問する機会を得てきましたが、1館訪問するごとに、その豊富な資料、優秀なライブラリアン、全米に広がるネットワークなど、その豊かな姿に感動が深まっていきます。
 
実はこの訪問は、この1月から東アジア図書館に就職され、ライブラリアンとしてのキャリアをはじめられた田中あずささんを訪ねてのものでした。まだ就職して間もない時期での訪問にもかかわらず、すでにいろいろと勉強されていらっしゃり、刺激になりました。いろいろとお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。この豊かな文化を伝えるべく、どんどん情報発信をしていってほしいとおもいます。これからのご活躍を期待しております。
 

2009/01/31

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異質が調和する街セダリアの公共図書館:現地レポート

カンザスシティとセントルイスという内陸で発展を遂げたミゾーリ州の2つの街のちょうど間、ハイウェイのI-70から南に外れたところにセダリアという街があります。人口は現在は20,000人ほど。鉄道のインターセクションの町として、鉄道関係の産業が栄え、その後トラックや機械のメンテナンスの基地として発展してきました。しかし、現在は北を通るハイウェイを人が通りすぎ、人口も減少傾向にあります。19世紀後半から1970年代までの営みと、その後の静かな時間の流れ。街は、異質なものが混じりあって調和している、そんなアイデンティティがあるように感じられます。
 
そんなセダリアの街に、現在もそのまま使用されているカーネギー図書館があるので、訪ねてみました。
 
詳細はこちらから。
 
Sedalia Public Library
http://www.sedalialibrary.com/
 
なんども挑戦してようやく建った図書館
アメリカのおおくの公共図書館が同様の歴史をもっていますが、セダリア公共図書館も、なんども図書館設置へ向けた住民の運動があり、そしてようやく建てられた図書館です。鉄道が通り街が大きく発展し始めた1870年前半には、住民グループが、講座や娯楽の提供とともに無料の貸本をはじめましたが、財源がもたず頓挫してしまいました。1870年代後半になり市民意識の高い女性グループが数百冊の本を購入し、無料図書館サービスを試行しました。その後1984念に無料図書館の設置構想が起こるも、一度目の住民投票はあえなく否決。翌年ようやく可決され、税金による図書館サービスが開始されました。
 
その後サービスの発展とともに、新しい建物への要望が高まり、1899年に図書館理事会メンバーがアンドリュー・カーネギーに依頼。この要望が認められ、1901年に現在の図書館が建設されるに至りました。
 

 
建物は地上2階地下1階。地下は児童室、1階は一般資料と参考調査室とコンピュータスペース、2階は学習室とオフィスになっています。足音が響くほどに静かな館内は、コンピュータまでもセピア色に閉じ込めたくなるような、歴史の匂いがします。
 
歴史建造物に指定されていることが入り口横の壁に。

 
入り口を入った正面のカウンターが図書館の中心

 
左の部屋は閲覧室。

 

 
街の歴史がガラスケースに保存されている。

 
気持ちが神聖になる階段をあがり2階へいってみる。

 

 
採光の吹き抜け。

 
100年前からこの空間で街の人が書を読み勉強していた。

 
同じ歴史を呼吸してきた壁際に置かれた本たち。ぼろぼろに読み込まれている。まだ引退はしていない。

 
見学しているうちに、どうかこの図書館はこのまま残し、そして使い続けてほしいと、願いにも似た気持ちが沸き起こってきました。静かに図書館員の方にお礼をいい、何か気持ちがきれいになって図書館の扉を後にしました。ただ、異質が交じり合うこの町の、ほんの一筋の要素しかここにはないような、そんなぎこちない違和感を感じながら。
 
「なにはともあれ、出発」とおもい、車をとめていた駐車場にもどるため交差点を対角線上に横切りながらふと横をみると、"...gional Libr..."の文字にふと目が留まりました。おや?と思い数歩もどって首をのばしてみると、やはり"Library"。どっからどうみても図書館ではないのに。
 

 
中に入っていくと、そこにはガラスのタイルに赤いネオンライトが光るカウンター。今見てきた図書館とはまったく対極な空間がそこにありました。カウンターの若い図書館員に聞くと、数年前まで車のパーツを売っているショップだったとのこと。それを買い取り、改築して、地域分館を作ったのだと。地上1階、地下1階。地上は成人向け、地下は児童室。
 

 

 
ティーンのためのゲームルームまで完備。

 
感想。。
アメリカの図書館は、その町の中心であるといわれますが、セダリアの町の図書館をみて、それは、町から産まれたものなのだから必然なのだということを、実感しました。
 
住民が、図書館が町の顔だということを知っていて、その住民たちが自分たちのほしい図書館を作る。古き時代を愛する人たちがその歴史をそのまま残したいように残す。その図書館をもち、車の修理で生業をたててきた人たちが、その大好きな空間をそのまま図書館にする。画一的な理論を押し付けた紋切り型の図書館建築ではなく、図書館が町のアイデンティティだというところにこだわる図書館建築。若き図書館員に、この赤いネオンはすき?ときくと、「クールよね」と。セダリアの町でこの色の光をみて育ってきたセダリアンには、落ち着く色合いに間違いなく。
 
町の人までかっこよく見えるようになってしまった、そんなセダリアの新旧公共図書館でした。
 
写真スライドショー

 

2009/01/29

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コミュニティを作り続けるジョンソン郡図書館:現地レポート

アメリカの田舎といえばカンザス州。”オズの魔法使い”のドロシーの出身地とされる場所です。このカンザス州を西から走りその田舎っぷりを体感した後、東の端のジョンソン郡図書館を訪問しました。
 
ジョンソン郡はカンザスシティの郊外に広がる地域であり、第二次世界大戦後に発展を遂げ、人口も45万人ほどにまで増加しています。郡とはいえ、高速道路が縦横無尽に走り、車が溢れる都市圏に発展しており、ジョンソン郡図書館中央館はその中にあります。
 
詳細はこちらから。

Johnson County Library
http://www.jocolibrary.org/
 

 
ジョンソン郡図書館は、1952年に設立され、その後中央館と13の分館から構成される図書館システムに発展してきました。設立以来、コミュ二ティを作ることがこの図書館システムのもっとも重要な役割であり、コミュニティを成長させながら自らも発展してきました。図書館カード保有率は85パーセントに上ります。
 
現在の中央館は1995年に新たに建設されたものであり、その後、この図書館はHAPLRでも毎年上位にランクインする実績を残しています。
 
ビジネス支援、地域資料、系図学、レファレンス
ジョンソン郡図書館(中央館)は、充実した成人サービスで定評があります。入り口を入ってすぐに右手側奥には、レファレンスカウンターが大きな存在感を示し、情報提供がこの図書館の大きな柱であることを象徴しているかのようです。入り口を入って左手のところには、貸出デスクが構えられ、そのデスクの置くには予約本がずらりと並び、この図書館の貸出の実績を感じることができます。貸出デスクにいる人たちは、有資格者の図書館員ではないとのことです。
 
レファレンスカウンターを取り囲むように、手前からビジネス支援、地域資料、系図学、レファレンスへと書庫が広がっています。

まずもっとも手前の重要なロケーションを占めるビジネス資料コーナーは、豊富な資料もさることながら、充実したサービスを展開しています。起業、マーケティング調査方法、資金運用方法など様々な情報提供が行われ、さらに図書館員が講師を勤めるビジネス関連の講座も活発に開かれています。
 

 
その奥に広がる地域資料コーナーには、ジョンソン郡の地域情報が豊富に取り揃えられています。奥まったところに押し込められがちな地域資料ですが、ここの地域資料はこの図書館の顔であることを示すかのように、明るい部屋の真ん中におかれています。最近の情報については、インターネットの情報をプリントアウトしてファイリングしたものなども作成されており、「生きている」という感じがしました。
 
地域資料ライブラリアンのスコットさんは、今日はこれからクラスがあるからといっていたので聞いてみると、今日は、写真の保存と発信に関する講座だそうで、教室にいってみると、20名ほどの参加者が集まってきていました。講義の内容は、各自ふるい地域の写真を持ち寄ってもらい、それをスキャナでとりこんで、加工編集して、DVDに保存したり、ソシャールネットワークやブログなどに載せて配信する方法などを教えるとのことでした。参加者は高齢な方々でしたが、ソーシャルネットワークへの掲載方法まで入れてこそ、ニーズにあった講座なのだそうです。すばらしい。
 

 
その奥には、地域資料と系図学のレファレンスカウンターがあります。系図学のレファレンスライブラリアンは1人だけですが、その人を中心にボランティア部隊(メンバーの多くは定年退職された方々)が結成され、このレファレンスカウンターに入っています。系図学の調査は長時間かかるものがおおいものですが、ボランティアの人たちは、系図学にとことん情熱のある人たちで、良き相談役として利用者を支援しているそうです。
 

 
ボランティアの人たちが中心となり、系図学の会というクラブも結成され活動している他、カード目録の要領で、新聞の死亡記事等をもとに地域の人たちの情報を目録化しています。これらの情報はインターネットからもアクセスできるようになっており、地域外からも元記事の複写依頼などが届くそうです。
 





(ジョンソン郡図書館ウェブサイトより http://www.jocolibrary.org/default.aspx?id=2168)
 
さらにその奥、レファレンス資料コーナーは、最近縮小され昔の半分程度の大きさになってしまったそうですが、それでもまだ大きなコーナーとして存在しています。資料の背表紙に色とりどりのシールが張られているのは、資料コーナー縮小のときにこれだけは残すと図書館員それぞれがつけたマークだとのこと。レファレンスライブラリアンたちの情熱が感じられます。
 

 

 
児童コーナー
訪問した時間が夕刻から夜にかけての時間だったためか、宿題をする子供たちの姿がたくさん見かけられました。児童担当の図書館員に聞くと、宿題支援サービスはこの図書館の大きな柱になっているとのことで、毎日毎日同じ子供たちの顔を目にするわと、笑っていました。近くに学校がいくつもあり、学校が終わると子供たちがここに来て宿題をし、親が車で迎えに来るまで勉強したり遊んだりしているのが日常の風景だそうです。
 
また子供主導のプログラムにも力を入れていて、去年には、子供たちによるファッションショーも開かれたとのことでした。このファッションショーは、デザイナーもモデルも企画も皆子供がやるというもので、親子合わせて100人以上の参加があり、好評につき今年も開催するそうです。写真が壁に飾ってありましたが、プロの領域です。また、子供たちのエッセイや詩などを募り、年に一度本として刊行しているそうで、これも子供たちによって選定され、本に仕上げられるそうです。仕上がった本を見せていただきましたが、見事なものです。参加した子供たちにも配られているそうです。
 



 
感想
ビジネスライブラリアンのケンドラさん、地域資料ライブラリアンのスコットさん、ユースサービススペシャリストのケリーさんが、いろいろとお話してくださいました。どこからどうみてもすばらしい図書館なのに、皆さんの話の端々に、ここがまだ不満、ここは改善する予定、と織り交ぜられ、この図書館がどんどん成長しているのだということを感じました。これが、地域コミュニティーを作る図書館の図書館員のマインドなのでしょうか。パワフルでした。
 
写真スライドショー

 
参考
E631 - 先取りレファレンス: 公共図書館と地元新聞社の協同の実践(カレントアウェアネス-E)
http://current.ndl.go.jp/e631
 
 

2009/01/28

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コロラドの公的幸福の中心、デンバー公共図書館:現地レポート

コロラド州のデンバー公共図書館は、ロサンゼルスとシカゴの間の地域において最大の規模を誇る図書館であり、また2001年に"Award of Excellence for Library Architecture"(図書館建築賞)も受賞するなど、建築の側面からも評価の高い図書館です。デンバーで行われたALA冬季大会終了後、このデンバー公共図書館を訪問してみました。
 
詳細はこちらから。
 
Denver Public Library
http://denverlibrary.org/
 

 
簡単に歴史
デンバー公共図書館は、John Cotton Dana賞で今なお歴史になお刻む図書館員ジョン・コットン・ディーナによってその歴史の幕を開けました。ディーナによりデンバー高校の一角に開設された公共図書館は、その後1910年にアンドリュー・カーネギーの資金提供により建て替えられました。このカーネギー図書館の建物は45年間使用されましたが、スペース不足が深刻となり、1956年にはカーネギー図書館の2倍の広さを誇る新しい図書館を建築しました。そのスペースもさらに小さくなり、1990年、9160万ドルの新図書館建設費用が予算化され、1995年に現在の建物が開館しました。
 
ディーナにより始められた”Center of Public Happiness”(公的幸福の中心)としての図書館は、着実に市民の生活に深くかかわり、地域の重要な公共機関として根付き、発展を遂げてきました。
 
荘厳
巨大な建築物が林立するダウンタウンの中心部に位置するため、概観の大きさをあまり意識することなく近づきましたが、飾り気のない裏手の入り口をくぐったとたんそこには、パブリックスペースである4階まで吹き抜けの荘厳なロビーが広がっていました。実際この建物は巨大で、540,000平方フィート(5万平米)の広さをほこり、地上7階のほか地下には閉架書庫があります。
 

 
ロビーを覗く通路側はすべて学習スペースとなっており、訪問した平日夕方の時間でもほとんど全ての座席が埋まっていました。
 

 
この巨大な図書館で、ここまで人がたくさんいるように感じられるのは、驚きでしたが、実際数値を確認して思わずうなづいてしまいました。レファレンスカウンターには行列ができ、500端末以上あるコンピュータも多くが埋まり、巨大な資料室は多くの市民で活気に満ちていました。(このあたり、写真がとれませんでした。)
 

(Denver Public Library のウェブサイトより)
 

 
無線は、図書館カードをもっていなくても無料でつかうことができます。ただ、登録が必要で、氏名、住所など必要な事項を登録する必要がありました。ピッツバーグの住所を登録したのですが、そういう利用者もおおいのか気になるところです。
 

 
連邦政府刊行物寄託図書館(FDLP)としての姿
 
デンバー公共図書館は、児童書、一般図書などの充実もさることながら、連邦政府刊行物寄託図書館の1つとして、重要な役割をになっています。連邦政府刊行物寄託図書館は、現在全米に1257館あり、そのうち51館は”地域寄託図書館”とよばれ、全ての政府刊行物を保有する特別な位置づけになっています。地域寄託図書館は、特定分野の資料のみを保有するその他の寄託図書館のバックアップを行う役割をになっています。この51館の多くは、大学図書館が指定されていますが、4館のみ公共図書館がになっているところがあります。そのひとつがデンバー公共図書館です。
 

("Regional Depository Libraries in the 21st Century: A Preliminary Assessment"より)
 
地域寄託図書館を見学するのは初めてでしたが、利用率が決して高いとはいえない政府刊行物を、広大なスペースに開架している姿勢に、デンバー公共図書館が寄託図書館として果たしてきた役割の大きさを実感することができました。
 

 

 
ただ・・・・。
 
他の政府刊行物寄託図書館と同様、デンバー公共図書館も、市民のニーズを評価し、有限なスペースの最適な利用方法を模索する中で、現在開架されている政府刊行物のほとんどを閉架書庫に移動させることを決定したそうで、このスペースに入り込むのは、すでに500台以上設置されていてもなお足りていないと評価されたコンピュータ端末だそうです。
 
このことを教えてくださったベテランの寄託図書館員は、すこしため息まじりでした。ネット時代にその位置づけを見直されつつある政府刊行物寄託図書館。その現場を垣間見た気がしました。
 
写真スライドショー

 
参考:
GPO、全米の連邦政府寄託図書館の現況調査報告書を公表(カレントアウェアネス-R)
http://current.ndl.go.jp/node/11576