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2009/01/29

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コミュニティを作り続けるジョンソン郡図書館:現地レポート

アメリカの田舎といえばカンザス州。”オズの魔法使い”のドロシーの出身地とされる場所です。このカンザス州を西から走りその田舎っぷりを体感した後、東の端のジョンソン郡図書館を訪問しました。
 
ジョンソン郡はカンザスシティの郊外に広がる地域であり、第二次世界大戦後に発展を遂げ、人口も45万人ほどにまで増加しています。郡とはいえ、高速道路が縦横無尽に走り、車が溢れる都市圏に発展しており、ジョンソン郡図書館中央館はその中にあります。
 
詳細はこちらから。

Johnson County Library
http://www.jocolibrary.org/
 

 
ジョンソン郡図書館は、1952年に設立され、その後中央館と13の分館から構成される図書館システムに発展してきました。設立以来、コミュ二ティを作ることがこの図書館システムのもっとも重要な役割であり、コミュニティを成長させながら自らも発展してきました。図書館カード保有率は85パーセントに上ります。
 
現在の中央館は1995年に新たに建設されたものであり、その後、この図書館はHAPLRでも毎年上位にランクインする実績を残しています。
 
ビジネス支援、地域資料、系図学、レファレンス
ジョンソン郡図書館(中央館)は、充実した成人サービスで定評があります。入り口を入ってすぐに右手側奥には、レファレンスカウンターが大きな存在感を示し、情報提供がこの図書館の大きな柱であることを象徴しているかのようです。入り口を入って左手のところには、貸出デスクが構えられ、そのデスクの置くには予約本がずらりと並び、この図書館の貸出の実績を感じることができます。貸出デスクにいる人たちは、有資格者の図書館員ではないとのことです。
 
レファレンスカウンターを取り囲むように、手前からビジネス支援、地域資料、系図学、レファレンスへと書庫が広がっています。

まずもっとも手前の重要なロケーションを占めるビジネス資料コーナーは、豊富な資料もさることながら、充実したサービスを展開しています。起業、マーケティング調査方法、資金運用方法など様々な情報提供が行われ、さらに図書館員が講師を勤めるビジネス関連の講座も活発に開かれています。
 

 
その奥に広がる地域資料コーナーには、ジョンソン郡の地域情報が豊富に取り揃えられています。奥まったところに押し込められがちな地域資料ですが、ここの地域資料はこの図書館の顔であることを示すかのように、明るい部屋の真ん中におかれています。最近の情報については、インターネットの情報をプリントアウトしてファイリングしたものなども作成されており、「生きている」という感じがしました。
 
地域資料ライブラリアンのスコットさんは、今日はこれからクラスがあるからといっていたので聞いてみると、今日は、写真の保存と発信に関する講座だそうで、教室にいってみると、20名ほどの参加者が集まってきていました。講義の内容は、各自ふるい地域の写真を持ち寄ってもらい、それをスキャナでとりこんで、加工編集して、DVDに保存したり、ソシャールネットワークやブログなどに載せて配信する方法などを教えるとのことでした。参加者は高齢な方々でしたが、ソーシャルネットワークへの掲載方法まで入れてこそ、ニーズにあった講座なのだそうです。すばらしい。
 

 
その奥には、地域資料と系図学のレファレンスカウンターがあります。系図学のレファレンスライブラリアンは1人だけですが、その人を中心にボランティア部隊(メンバーの多くは定年退職された方々)が結成され、このレファレンスカウンターに入っています。系図学の調査は長時間かかるものがおおいものですが、ボランティアの人たちは、系図学にとことん情熱のある人たちで、良き相談役として利用者を支援しているそうです。
 

 
ボランティアの人たちが中心となり、系図学の会というクラブも結成され活動している他、カード目録の要領で、新聞の死亡記事等をもとに地域の人たちの情報を目録化しています。これらの情報はインターネットからもアクセスできるようになっており、地域外からも元記事の複写依頼などが届くそうです。
 





(ジョンソン郡図書館ウェブサイトより http://www.jocolibrary.org/default.aspx?id=2168)
 
さらにその奥、レファレンス資料コーナーは、最近縮小され昔の半分程度の大きさになってしまったそうですが、それでもまだ大きなコーナーとして存在しています。資料の背表紙に色とりどりのシールが張られているのは、資料コーナー縮小のときにこれだけは残すと図書館員それぞれがつけたマークだとのこと。レファレンスライブラリアンたちの情熱が感じられます。
 

 

 
児童コーナー
訪問した時間が夕刻から夜にかけての時間だったためか、宿題をする子供たちの姿がたくさん見かけられました。児童担当の図書館員に聞くと、宿題支援サービスはこの図書館の大きな柱になっているとのことで、毎日毎日同じ子供たちの顔を目にするわと、笑っていました。近くに学校がいくつもあり、学校が終わると子供たちがここに来て宿題をし、親が車で迎えに来るまで勉強したり遊んだりしているのが日常の風景だそうです。
 
また子供主導のプログラムにも力を入れていて、去年には、子供たちによるファッションショーも開かれたとのことでした。このファッションショーは、デザイナーもモデルも企画も皆子供がやるというもので、親子合わせて100人以上の参加があり、好評につき今年も開催するそうです。写真が壁に飾ってありましたが、プロの領域です。また、子供たちのエッセイや詩などを募り、年に一度本として刊行しているそうで、これも子供たちによって選定され、本に仕上げられるそうです。仕上がった本を見せていただきましたが、見事なものです。参加した子供たちにも配られているそうです。
 



 
感想
ビジネスライブラリアンのケンドラさん、地域資料ライブラリアンのスコットさん、ユースサービススペシャリストのケリーさんが、いろいろとお話してくださいました。どこからどうみてもすばらしい図書館なのに、皆さんの話の端々に、ここがまだ不満、ここは改善する予定、と織り交ぜられ、この図書館がどんどん成長しているのだということを感じました。これが、地域コミュニティーを作る図書館の図書館員のマインドなのでしょうか。パワフルでした。
 
写真スライドショー

 
参考
E631 - 先取りレファレンス: 公共図書館と地元新聞社の協同の実践(カレントアウェアネス-E)
http://current.ndl.go.jp/e631
 
 

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