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2008/12/31

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古き良き教育の歴史を現代に残す図書館:ポーランド分館図書館現地レポート

オハイオ州ポーランドは人口3000人弱の小さな町です。その歴史は古く、1796年に創立し、19世紀にはいくつもの学校や大学が集まり、この地域の教育の中心地としての地位を築きました。中でもポーランドアカデミー公立学校は誉れ高く、第25代大統領のウィリアム・マッキンリーが学んだ学校としても知られています。歴史ある学びの町の図書館は、その歴史に対する街の誇りを感じさせる美しい図書館です。

詳細はこちらから。
Public Library of Youngstown and Mahoning County
http://www.libraryvisit.org/projects.htm



ポーランド分館図書館(Poland Branch Library)は、マホーニング郡とその郡都であるヤングスタウンの公共図書館システムである「ヤングスタウン及びマホーニング郡公共図書館」の1分館で、新館建設及び改築のプロジェクトにより、2001年にオープンしました。この町の図書館としての歴史は1935年にまでさかのぼります。

グリーンアーキテクチャー


この図書館の建物は、もともとポーランド・ユニオン神学校の学生寮だったもので、その後個人・法人によって長らく使われていたものを譲り受け図書館に改築したものです。アメリカの環境配慮型建築である”グリーンアーキテクチャ”を基本コンセプトとし、屋根や床、ガラス窓、さらには駐車場まで、あらゆる部分にリサイクル素材を使用しています。公共建築におけるグリーン秋テクチャの優良事例として雑誌等にも紹介されています(例:Clem Labine's Traditional Building)。

120台分ある駐車場のアスファルトは、アスファルトとタイヤのリサイクル素材。


床板は古い納屋の床に使われていたものを再利用。


ガラスは廃ガラスを15%使用している。ふんだんに外の光を取り入れ光熱費の節約にも貢献。




またテーブルや椅子、絵画や工芸品などは、地域の職人や芸術家のものをできるかぎり取り入れているそうです。特に椅子はとてもすわり心地がよく、大人用の学習スペースだけでなく、子供のスペースの椅子も同じデザインの手作りのものを使用していました。小さな女の子がちょこんと姿勢よく座って本を読んでいるのが印象的でした。





写真スライドショー




古き良き教育の歴史を持つ町の誇り


開館してまもなく、オハイオ州知事も視察に来て、この環境に優しい図書館建築を率直に賞賛し、間違いなくポーランドの町の、またオハイオ州のランドマークだと述べたそうです。

田舎の古い木の家で育った私にはどこか懐かしく、これはしばらく滞在しなくてはもったいないと、きれいに飾り付けられたクリスマスツリーの前の椅子に席をとりました。のんびりと撮った写真を整理していると、1人の女性が本をたくさん抱えてやってきて、写真を撮っていた方よねと、話かけられました。彼女は、今近くの町に住んでいるそうですが、今新しい家をこのあたりに探しているそうです。今の図書館がさびしい限りで、今日初めてこの図書館に来てみてこの町に引越しする決心が固まった、とおっしゃっていました。図書館カードもこんな可愛いのよと、手にした新しい図書館カードをうれしそうに見せてくれました。
 


古き良き教育の歴史を持つ町の図書館は、落ち着いた、環境にも人にも優しい図書館でした。
 

2008/12/29

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全ての知へのゲートウェイ:サウスフィールド公共図書館現地レポート

デトロイト都市圏のライブラリアンが皆「サウスフィールドはすばらしい」と口をそろえるサウスフィールド公共図書館に行ってきました。2003年に新しい建物を建て最先端のサービスを展開している図書館ですが、実は資料では1844年あたりから活動が確認される歴史ある図書館です。以前1980年代90年代と日野図書館と交流があったといえばなんとなくうなづけるものがありますが、今のサウスフィールド図書館の姿は、市民のニーズに基づいて同時代性を追い続けると図書館はこう進化するのかと、思わずうなってしまう図書館です。

詳細はこちらから。

Southfield Public Library
http://www.sfldlib.org/



建築の背景


デトロイト中心部から高速にのって車を20分ほど走らせたところにあるサウスフィールドは、多くの大企業がオフィスを構える商業地区であり、なおかつ中心部から郊外へのミドルクラスの人たちの移動の中で人口も増加してきた地域です。1970年代までにユダヤ系、90年代までにミドルクラスの黒人が移住し、現在は白人約40%、黒人約55%という人口構成になっています(参考:DataPlace)。オフィススペースはデトロイト中心部よりも多いともいわれ、ローレンス工科大学やオークランドコミュニティ大学など8つの大学が図書館から数マイルの距離にあります。この勢いよく発展を続けた地域で、図書館を時代のニーズにあった最先端のものにしようという運動がおこったのが90年代後半で、その後99年に3600万ドルの新図書館建築費用の目的税が市民投票によって承認されました。新図書館建築をリードした当時の館長Doug Zyskowski氏は、新しい図書館を、”我々が知る全てへの、また我々が知ることを夢見てきた全てへのゲートウェイ”となるものにしようと強力なリーダーシップを発揮し、また奇抜な建築アイデアもどんどん取り入れていったそうです。様々な機会・方法を通じて集められた市民のニーズに基づき設計は進められてゆき、2003年に時間的にも予算的にも計画どおりに建設が行われ開館しました。

子供が「行きたい!」という場所


ディズニーランドや映画など、子供が行きたい!という場所はたくさんありますが、子供が「図書館に行きたい!」と駄々をこねるほどの図書館というのはなかなかない気がします。が、この図書館は、そういう図書館なのだそうです。この図書館は12歳以下の子供は親と同伴でなくてはいけないというセイフティー・ポリシーがあります。実際広大なアメリカのこと、移動手段の限られる小さな子供がくるのはちょっと難しいものがあります。それなのに、年末のこの日も小さなよちよち歩きの子供たちから高校生ほどの年齢と思われる子供たちまで、図書館は活気に満ちていました。児童室のライブラリアンに尋ねたところ、これがなんとなく普通という感じの状態で、近隣の学校が終わったあとの時間帯は、毎日大騒ぎで、子供たちが大人たちを引っ張ってくるのだそうです。

確かに魅力的です。Reader's Tree houseやDragon's Denと名づけられたコーナーは、居心地がよくて小さな子供たちはそりゃぁ大好きだわという空間でしたし、、Club Q&Aは名前のとおりちょっとしたクラブのようで中高生がここで時間をすごすことをカッコイイと思うのもうなずけました。コンピュータ端末も、グループ学習室も、どこもいっぱいで、年末なのに子供たちは楽しげにわいわい勉強していました。家具は皆木製でとても優しい感じでした。

Reader's Tree house


木の裏側には暖炉があり、暖炉の前にはチェスボードがありました。ぽかぽかで幸せ。


木の中も居心地よさそう。


Dragon's Den
手前の入り口の天井部分は大きな本。


近づいていくとドラゴンの吠える声が聞こえてくる。アミューズメントパークそのもの。


Club Q&A
ティーンコーナーはクラブっぽいつくり。これが図書館のメインエントランスを入ってすぐ左の一等地にある。


大人がちょっとよい身なりで出かける場所


どちらかというと成人向けの2階、3階を歩いていてとても気になったのが、大人がとてもおしゃれなかっこうをしているということでした。ガラス張りのグループ学習室は、明らかに仕事の最中と思われるゴージャスなみなりの女性が連れ添って利用し、ビジネスレファレンスのコーナーでパソコンをたたく人もやり手の空気をかもし、暖炉の前で本を広げる白髪の男性もとてもエレガントな立ち居振る舞いをし、なにかおしゃれが気になりました。もちろんカジュアル派もあたりまえにいましたが、今まで見てきた他の図書館ではありえないほどおしゃれな格好をしている人がおおくいました。高所得層なのかと思い、後で館長とお話をしたときにこそっときいたところ、そういうわけではなく、図書館にそういう機能と空気があるから、みんな自然にそうなっているのだと思うという返事が返ってきました。確かにビジネス向けの資料が充実し地域の研究図書館的な役割を果たしており、ビジネス目的での勤務中での利用が多いのは確かだそうです。

無線も図書館IDなしでログインできました。


人が多すぎて写真がうまくとれず。デスクスペース、コンピュータスペースは撮影は不可能でした。


館長室へ


この図書館は館長クラスの人とお話をできればと思っていたのですが、カウンターのライブラリアンが、私が言うよりも先に撮影が終わったら館長のデイビッドに会いに行ったらいいわと勧めてくださいました。一通り撮影が終わり館長室に訪ねていくと、デイビッドさんが笑顔で迎えてくださり、自慢のサウスフィールド・ルームに案内してくれました。この部屋は理事会などが行われる部屋で、実はハリウッドの映画の撮影現場にもなったそうです。1日あたり1000ドルほどの使用料収入が得られたとか・・・。


なぜこのように成功を遂げることができたと問うと、市民・地域との関係だとの答えが返ってきました。地域に8つある大学からの期待、地域の企業のビジネスパーソンたちとの関係構築、地元の人たちのあらゆるニーズに応えようとしてきた歴史、そういったものが図書館建築目的税の承認、内装の装飾品や蔵書の寄付寄贈、圧倒的な利用頻度などにつながってきたのだそうです。現館長はこの図書館建築後に他の図書館から引き抜かれてきたので当時のことは聞く範囲でしかないとのことでしたが、現在の不況・財政難の中にあっても、「この利用者の行列をなしている様子を見てごらんよ。絶対にサービスの質は落とせない。」と笑顔の奥に真剣なまなざしで語ってくださり、その姿から常に市民との関係を最高の状態に保っている図書館の底力を感じました。

写真スライドショー


利用者が多すぎて撮りたい場所の写真がうまく撮れませんでしたが。


サウスフィールド公共図書館提供の写真 on Flickr
http://www.flickr.com/photos/southfieldlibrary/

ひとこと感想


この図書館、もし機会があれば、ぜひどこかでもっと紹介したいと思います。
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気になるデータベース:DataPlace

先の大統領選で、地域ごとに青だの赤だの、この地域はどのような人種が多いだのといったことをCNNなどがしきりと解説していましたが、今後どうなっていくべきかは別として、現状ではこのような地域の人口の特性の分析がいろいろなものの基礎になります。もちろん米国の公共図書館の理解にも、抑えておくべき要素のひとつです。2006年にPlanetizanのトップ10ウェブサイトにも選ばれた、KnowledgePlexのDataplaceは、手軽に無料で使える統計ツールとしてとても重宝します。人種別、年齢別等の人口密度や持ち家率など、複数都市間の比較や地図の作成などをしてくれます。

詳細はこちらから。

DataPlace by KnowledgePlex
http://www.dataplace.org


 
DataPlaceのよいところは、どのような情報源を使ったのかがきちんと確認でき、さらにその情報源もきちんと信頼できる情報源が使われていること、さらに作成したデータをウィジェットとしてブログやウェブサイトに簡単に貼り付けることができることです。

ためしに、今回訪問しているデトロイト都市圏の白人比率の地図のウィジェットを作成してみました。今回訪問する図書館のうち、サウスフィールド公共図書館はデトロイト中心部と同様白人比率が低く、ウェスト・ブルームフィルドやクリントンは白人比率が高い地域になっています。


DataPlaceは今後も情報源が追加していく予定だそうなので、これからもっと使えるツールになってくれそうです。

2008/12/28

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教育を第一に掲げる図書館:ウェスト・ブルームフィルド公共図書館現地レポート

デトロイトの西の郊外に広がるウェスト・ブルームフィルドというタウンシップにある公共図書館に来ました。この図書館は1934年にKeego Cass Women's Clubという公共心あふれる女性グループの手によってはじめられた図書館で、その後1937年からタウンシップによって運営されています。市民の図書館税を運営資金として運営を続け、1984年に開館した現在の建物も苦境を乗り越えて図書館税の承認を得、建設にいたりました。現在もその伝統を引き継ぎ、潤沢な資金に支えられた図書館として充実したサービスを提供しています。

詳細はこちらから。

West Bloomfield Township Public Library
http://www.wblib.org/



撮影の許可をもらう


図書館での撮影は、いつも気を使っていて、アポなしの図書館見学のときは必ずインフォメーションカウンターで撮影の可否について確認するようにしています。持ち歩いているのがキャノンの一眼レフなので、こそこそ隠れてとれるものでもないですし、またこそこそとったところで資料としてはまったく使えない写真になってしまうので、館に入って空気を掴んだら、まずは撮影許可を念押しにいただくようにしています。これをすると安心してどうどう写真撮影ができます。

館のポリシーをしっかり把握しているやり手とおもわれるライブラリアンの人を探して確認することが鉄則で、この会話のときに自分の立場を明かしたりして、親切な人であればいろいろなパンフレットやらイベントカレンダーやらをいただきます。最初のころはおっかなびっくりでしたが、米国の図書館員さんはたいてい親切に「撮影はOK」といってくれます。時にはそれに続いて、「人(特に顔)が入り込まないように気をつけて」とか、「児童室はそこのライブラリアンに確認してね」といったアドバイスをいただいたり、逆に撮影ポイントを教えてくれたりします。できるだけライブラリアンの名前も聞くようにし、後でほかのライブラリアンと話をするときに、「あそこのカウンターで○○さんに確認したのだけれど、ここコーナーでの撮影は大丈夫?」といった風になんども確認しながら、新しい会話を作っていったりします。

この日も入館してインフォメーションカウンターにゆき、若手の元気そうな男性図書館員に確認し、素性を伝えると、とても親切にいろいろな資料をくださいました。さすが米国のすばらしい図書館トップ100にも入るような図書館は、このような対応もこなれています。

充実の児童サービス


この図書館は特に幼児サービスに力を入れている図書館で、ライブラリアンが脳の発達理論や教育理論をしっかりと研究し、裏づけをもってサービス設計をしています。入室して真っ先に目に飛び込んでくるカラフルな部屋の様子はまさにその実践の1つです。パペットコーナーや学習スペースも充実しています。

この図書館でもWiiやXboxなどのゲームソフトがコレクションになっており、ヤングアダルト部門とあわせると200タイトルほどあるようです。やはり人気らしく、ゲームの棚はほとんど空っぽというような状態でした。週に2度もゲームのプログラムがあるそうで、完全に図書館プログラムとして定着しているとのことでした。「なぜ?」と聞くと「やらない理由はないわ。今まで絵本の提供から、DVDの提供、コンピュータの提供にいたるまで、多様なメディアを提供してきたわけだし、ゲームもその最も新しいメディアのひとつだもの。」と毅然とした答えがかえってきました。「否定的な意見はないの?」ときくと、「私が知る限り、この図書館では肯定的な意見が圧倒的。」とのことでした。先週の土曜日も午後1時から4時までギターヒーローのコンペティションがあったそうで、なかなかのもりあがりだったそうです。


児童室にもコンピュータが設置してあり、一応念のためフィルタリングがかかっているかどうか確認しようと思い質問したところ、以外にも「右側の半分がかかっていて、左側の半分がかかってない」との返事が返ってきました。よりオープンな図書館と、図書館員等による教育重視の方向性を打ち出し、フィルタリングを入れないポリシーにしたのだそうです。フィルタリングを入れていないパソコンは、開くときに法律を守って利用することに同意するよう確認画面がでます。これは児童室以外においてあるフィルタリングのかかっていない他の端末とまったく同じ確認画面でした。





パペットの貸し出しはこの図書館はしていないとのことでした。


スキャナやオーディオセットも提供


たくさんの人がいたので全体の写真は取れませんでしたが、1階のいちばん中央にパソコンが30台ほど設置されていました。驚きなのは、スキャナーとヘッドセットが全てのパソコンに設置されているところです。これはすごいなと思い確認してみたところ、「スキャナは図書館の資料をスキャニングしたりするのに使うし、映画を見たり音楽を聴いたりゲームをしたりするのにヘッドホンはいるでしょ?」とのことでした。特に学校の宿題などをしに来る生徒が多く、そのためには必須のアイテムなのだそうで、ここでも教育重視の姿勢が全面に出ている感じがしました。大人ばかりが使っていたので大人のためのコーナーなのかと思っていましたが、確かにこのワークステーションの場所は、ヤングアダルトコーナーとCD、DVDのコーナーに隣接していて、児童・生徒が使いやすい空気でした。

ためしにYou Tubeを表示させて、ワークステーションを撮影してみました。


写真スライドーショー




感想メモ


新しいメディアや機器の提供もさることながら、すでに長い歴史を持つ英語等のリテラシープログラム、グループ学習室など、土台がしっかりしていて、その上での新しいサービスの展開が行われていました。遊びの重要性もしっかりサービスに組み込まれ、ビデオゲームだけでなく、盤ゲームもたくさんあったり、グラフィックノベルやマンガのコレクションもなかなか充実していました。幼児サービスから成人サービスまで、教育というポリシーを徹底すると、こういう図書館になるのでしょうか。なにかとても強いインパクトのある図書館でした。

2008/12/27

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まるで我が家のような図書館:クリントン・マコーム公共図書館現地レポート

ピッツバーグから車を5時間半走らせ、デトロイト近郊のクリントン・マコーム公共図書館に来ました。2003年に開館した新しい図書館で、ゲーム大会の開催などで日本にもちょっと名前が聞こえたことのある図書館です。クリントン・タウンシップは滋賀県野洲市と姉妹都市で。人口も増加傾向にあり、ミシガン州のタウンシップの中では一番大きなもので市への昇格も見込まれているようで、このあたり、やはり姉妹都市だけあって、2004年に市になった野洲にどこか似ています。

それにしてもラブリーな図書館でした。

詳細はこちらから。

Clinton-Macomb Public Library
http://www.cmpl.org/
 



まるで我が家のような図書館


クリントン・マコーム公共図書館は、”Heart of the Community: The Libraries We Love”という本の中で「ハイテクなまるで我が家のような図書館」と紹介されています。このフレーズはまさにこの図書館にぴったりの表現で、本物の火をつかっている暖炉、おもちゃであふれた子供部屋、大画面液晶テレビで映画を楽しめるヤングアダルトコーナー、無線のインターネットが使える書斎のような学習スペース、豊富な音楽、映画、ゲームなどのコレクション、などなど、図書館のあちこちのコーナーがちょっとリッチで幸せな北米の家のような空間をかもし出していました。

暖炉のある大衆雑誌コーナー。火は本物。ぽかぽか暖かくてねちゃいそう。


ヤングアダルトコーナー。ネオンがナイス。


児童コーナー。馬車だの飛行機だのいろいろ。
 

豊富なDVDコレクション。難しいドキュメンタリーではなくもむしろポピュラーな大衆もの中心。


子供連れで来館していたお父さんとたまたま話はじめたところ、このご家族はこの図書館から歩いてすぐのところに住んでいるとのことで、「それはラッキーですねー」というと「ぜったいラッキーだね。こどもをつれてよくくるよ。いい時間をすごせるとてもいい場所だね。」とにこにこしながら語ってくれました。今日は年末でお客さんはとても少ないとのことですが、それでも広い館内にはたくさんの人がゆったりと時間をすごしていました。

ライブラリーショップ


1階の奥まで行くと、そこには、とてもとても可愛らしいライブラリーショップが小部屋の中に入っていました。入り口の脇のガラスのショーケースのディスプレイはとても繊細で、塵ひとつなくきれいにされて、きらきらしていました。中に入っていくと、女性が2人カウンターの奥のほうで「クリスマスに焼いたケーキがおいしかったの、レシピはね、、」と楽しげに笑いながらおしゃべりしていました。この人たちはボランティアかなと思い話かけると、やはりボランティアだそう。ライブラリーショップは商品のセレクトから店番まですべてボランティアで運営されているそうで、このショップだけでもボランティアが40人ほどいるとのことでした。なにか報酬はあるのか聞いたところ、まったくなしで、ピュアにこの図書館が大好きでお手伝いしているのだとのこと。確かにここに来てにぎやかに同じ町の人とおしゃべりしながら2,3時間の時間を過ごせたらとても幸せだと、妙に説得力がありました。

ライブラリーショップ入り口。


4冊で1ドルの古本。リボンを結んで素敵なディブプレイの一品に。


ところ狭しと置かれた品々。


子供を守るポリシー/子供本位のサービス


2階にいくと、コンピュータールームがあり、入り口に18歳以上の表示がありました。大人用のコンピュータであることをむしろ強調するのはフィルタリングソフトとの関係かなと思い、レファレンスカウンターにいたライブラリアンにたずねると、やはりそうだとのこと。フロアにあるコンピュータは基本的にフィルタリングソフトが入っていて子どもも大人も混じって利用し、コンピュータルームの中のコンピュータはフィルタリングなしでどんなコンテンツでもアクセスできるようにしているそうです。

18歳以上立ち入り可の張り紙。


今回の図書館見学にあたり、このあたりの図書館のウェブサイトを見ると、図書館では○歳以下の子供たちは親と同伴でなくてはいけないというポリシーが見られ、少々不思議に思っていました。このことを聞いてみたところ、この図書館には公共の交通機関でのアクセスがなく、しかも目の前には広大な墓地があるため、歩いてこれる人の数は限られていて、交通の便のない子供たちが徒歩や自転車で通うのは少々危険が伴うそうです。実際私も車で走っていて、こんなところにあるのでは子供の来館は大変だなと思いながらここまできました。広大なアメリカならではの事情で、このポリシーにはこんな理由があったのかとと感じました。

およそ300本あるゲームコレクションもさることながら、児童用の本やオーディオブック、教育コンテンツの充実ぶりは目を見張るものがありました。児童コーナーで面白かったのはパペットコーナーで、たくさんのパペットが置いてありました。このパペットコーナーには時にはプロの人を招いたイベントをすることもありますが、多くは子供たちが自由に遊んでいるそうでした。私がいる間にも子供たちがやってきて、パペットと戯れていました。実はこのパペットたち、貸出可で、ひっくりかえすときちんとバーコードが着いています。家でお母さんお父さんの前で披露したり、お部屋でこっそり練習したりするそうで、返却されるとお菓子やジュースでよごれてしまっているのでドライクリーニングに直行ということもよくあるそうです。





2階のフロアは、左周りにまわると、鉄道模型が動き出すエントランスから始まり、小さい子供たちのコーナー、ティーンコーナー、ヤングアダルトのビジュアルコンテンツのコーナー、レファレンス、ビジネス資料のコーナーと、年齢が徐々に上がっていくフロアプランになっていました。なんだか、子供の成長を見守っていくという姿勢が、フロアプランからも感じられるようでした。

ドライブスルーと返却資料仕分けシステム


車でのアクセスがほとんどのこの図書館、外に回るとなんとドライブスルーがありました。近くに寄ってみてポストを見てみると、なんと「24 hour pickup / 24 hour return」の文字。これはさすがに怪しいとおもい聞いてみると、「当初はそういう計画があったみたいだけど~」と苦々しげに笑われてしまいました。





この返却ポストの内側には、返却資料を自動的に仕分けするシステムがあります。分類別に箱に振り分けてくれるというもので、これはなかなか図書館員に優しいシステムです。このコーナー、休憩コーナーの一角からガラス越しに見れるようになっていて、中で仕分けシステムと人が働く様子がとてもよく見え、私もついつい時間をすごしてしまいました。



その他の写真のスライドショー




出会いと感想


2階のレファレンスカウンターでお話をしたマリアーナさんは、「この町は日本の町と姉妹提携しているのよ。ヤス。しってる?」と、クリントン・タウンシップが野洲市と姉妹都市であることをきっかけに、図書館のこと、町のこと、とても親切にいろいろなことを話してくださいました。その上、「あそこはみた?ここは?」と館内中を案内してくださいました。イタリア系の方で、もとはデトロイト公共図書館の多言語のコレクションを長く担当されていたベテラン司書さんで、プロだ!と思わせる方でした。

まるで我が家のような図書館は、建物の設計のすばらしさもさることながら、それを利用する町の人と、ボランティアと、素敵なライブラリアンに支えられたあたたかい図書館でした。野洲市はいいところと姉妹提携をしましたね。

参考
Video game events at libraries draw crowds of teens
Posted by The Associated Press February 18, 2008 07:31AM
http://blog.mlive.com/michigan/2008/02/video_game_events_at_libraries.html

2008/12/26

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本からインスピレーション:ニューヨーク公共図書館の蔵書で新しいデザインを産み出す

本はいろいろなデザインのインスピレーションを与えてくれるものですが、ニューヨークで活躍するアーティストが、ニューヨーク公共図書館の本を使って新しい作品を作り出す、という企画が行われています。この企画は、ニューヨーク公共図書館のレファレンスライブラリアンと、ニューヨークの様々なデザインを紹介しているウェブサイトDesign *Spongeが協同しておこなっているものです。

詳細はこちらから。

video debut: design by the book!
http://www.designspongeonline.com/2008/11/video-debut-design-by-the-book.html

この企画に参加しているのは、Moontree LetterpressのRebecca Kutysさん、John Pomp GlassのJohn Pompさん、Julia RothmanMike Perryさん、Lorena Barrezuetaさんの5人のアーティストです。5人がニューヨーク公共図書館の蔵書からインスピレーションを得て新しいデザインを産み出していく模様を、ドキュメンタリーシリーズとしてインターネット(のみ)で放映しています。今のところ第2話まで見ることができます。
 
エピソード1では、Design *SpongeのライターであるGrace Bonneyさんがレポーターになり、この5人のアーティストを紹介しています。



エピソード2では、5人のアーティストがニューヨーク公共図書館のレファレンスライブラリアンJessica Pigzaさんに会い、彼女の紹介で、インスピレーションを与えてくれそうな本たちに出合っていきます。


 
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お金のない弱小図書館のための無料Web2.0サービス活用のススメ

お金がなくてもいいサービスはしたいししなくちゃならない。米国の公共図書館もなかなか大変ですが、シリコンバレーのサン・ノゼ公共図書館の図書館員でLibrarianInBlackのブロガーであるSarah Houghton-Jan氏が、資金力のない小さめの図書館が使える無料のWeb2.0サービスについてのプレゼンテーションファイルを公開しています。

詳細はこちらから。

"Web 2.0 Services for Smaller, Underfunded Libraries" (PDF - 2.67MB)
http://librarianinblack.typepad.com/files/web20servicesforsmallerunderfundedlibraries---canedinstitute2008.pdf

物理的な図書館の利用者は、少しずつしか増えていないのに対し、デジタルな図書館の利用者は劇的に増えており、
将来はこうなるので、
図書館はもっとオンラインサービスにフォーカスしていかなくてはならないそうで、Sarahさんおススメの、「ほぼどこの図書館でもできる」、ウェブ上でのプレゼンスを高める20のステップを紹介しています。宣言どおり、とくに目新しいものはないですが、具体的な優良実践事例のリストがあり、わかりやすいプレゼンファイルになっています。

レファレンスサービス


無料の同期型デジタルレファレンスとしてすっかり定着したIMレファレンスも、相変わらず利用拡大にむけて努力がつづけられており、Meeboのウジェットを図書館ウェブサイトに貼り付けてたり、高機能なTrillian Astraを使ったり、またスカイプを使ったビデオチャット(オハイオ州立大学図書館)などが始まっていることが紹介されています。(Googleのビデオチャットはまだ紹介されていませんが、どこかでもう使用事例はあるのでしょうか。)

Meeboのウィジェットの導入事例:Topeka & Shawnee County Public Library(画面右カラム真ん中あたりにウィジェットが貼り付けられています。MeeboではGoogle TalkやMSN、Facebookなどをまとめて管理できるので、利用者がどのようなチャットソフトを使っていてもIMレファレンスを提供することができます。)
 

 

延滞防止のためのアラートサービス


日本ではあまり知られていないですが、Library Elfというサービスがあります。図書館の利用者の中には、家族で何十冊もの本を借りている方もいますし、また自宅近くの公共図書館、勤務先のある地区の図書館、大学図書館、など複数の図書館を利用していて大変なことになっている方もいます。Library Elfはそんな方におススメなサービスで、登録しておくと、図書館の返却期限が近づくとメールやRSSで知らせてくれるサービスです。督促作業の負担の軽減のために多くの図書館がこのサービスをサポートしています。
 

 
そのほか、ブログ、オンラインブッククラブ、SNS、画像共有サイト、動画共有サイトなど、”定番”が紹介されています。日本の図書館の場合、自治体のフィルタリングソフトのせいでネットのサービスに自由にアクセスできないなどというところもあるので、「ほぼどこの図書館でもできる」というのはあてはまらないかもしれませんが。
 
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Ning上のライブラリアンブローガーのソーシャルネットワーク

Ningの話を情報学&イベント仲間に話したところ、意外とみんなつかったことがなくそれじゃぁ一度試してみようと、スキーのスケジュール管理&写真・動画共有&ネットワーキングの身内SNSを作って遊んでいます。さすが情報学の仲間、とくに留学生はみんな複数のSNSをうろうろしているので、こういうことに関しては適応能力がはやいですね。類は友を呼ぶ。

Ningを検索したところ、図書館員系のSNSもいくつかあり、中に、ライブラリアンでブログをやっている人のためのソーシャルネットワークというのもありました。

詳細はこちらから。

Librarian Bloggers : Librarians who Blog
http://librarianbloggers.ning.com/
"A space for all the people who are out there blogging about libraries, information science, and everything in between."

現在参加者は152人で、じわじわと増えているようです。米国のライブラリアンブロガーが中心です。活動が特に盛んというわけではないようですし、私にはブロガーがSNSでつながることの意味は良くわかりませんが、使えそうなものはなんでもつかってみることにこしたことはありません。たぶん。

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図書館情報学大学院の図書館:無料コーヒーもある憩いの場

イリノイ大学アーバナ・シャンパーン校の図書館情報学大学院の図書館が、物理的な施設としての図書館を閉鎖することを検討しているというニュースが流れています。ピッツバーグ大学の図書館情報学図書館も、決して利用が多いとはいえないですが、それでも学生の憩いの場として重要な役割を果たしています。

詳細はこちらから。


(写真は公式ウェブサイトより)


(写真は公式ウェブサイトより)

図書館情報学大学院の入学式には、かならず図書館情報学図書館の代表を勤めるエリザベス・マホニー教授がやってきて、図書館をどんどん使ってねとアピールします。1年ほど前の私たちの入学式のときにも、マホニー教授がやってきて、「今日はぜったいこれだけは覚えて帰ってね。図書館は大学院の建物の3階にある。私の名前はエリザベス・マホニー。あなたたちの図書館だから、どんな目的でもいいからどんどん使ってね。」と、とても手短く、でも決して忘れられないほどのインパクトある説明をしていきました。

マホニー教授の方針で、常に図書館には無料のコーヒーが保温ポットにいれられていて、学生はいつでも自由に飲みにいけます。もちろん紙コップや砂糖・クリームも置かれているし、ときにはあめちゃんやりんごやビスケットが置かれていることもあります。入り口を入ってすぐのところのソファースペースでは、飲食もOKで、学生たちは、授業の待ち時間や、グループミーティングの合間にサンドイッチを食べたり、ドライフルーツや生にんじんをかじったりしています。建物の中に研究室のある博士課程の学生も、ふらっとここにきてコーヒーをとって出て行くすがたをよく見かけられます。

図書館情報学大学院は8階建てのビルで、主に授業が行われるのは4階、5階、8階。事務も5階にあり、3階は普段まったく通らない場所です。もしそこに居心地の良い憩いの場があることを知らなければ、入り口も小さく外からは見えにくく、多くの学生がまったく立ち寄らなくなりそうな図書館です。実際、電子ジャーナルの充実しているピッツバーグ大学では授業の資料もほぼオンラインで入手でき、紙媒体で必要なものはむしろ他分野の資料でありほかの図書館を利用するため、この図書館におかれている紙資料を利用する重要度はあまり高くないので、マホニー教授にもその危機感はあるようです。

ところがこの図書館は、いけば必ずというほどマホニー教授やフレンドリーな図書館情報学の院生バイトの司書がいて、入っていくと、「はーい」と声をかけてくれ、そして時には、「コーヒー、今入ったところだよ」などと教えてくれたりします。

図書館に、オンラインではなかなか見つけにくい資料があるのはもちろんのこと。学生はコーヒーを片手にふらりと書架にいき、何冊かの本や雑誌をピックアップし、ソファに寝転びそれを読む。そんな風景をみていると、居心地のよさが呼び水になって、学生は貴い資料に出会っていっているのだなと感じます。

私にとっては、京都で通った大学の司書課程資料室もこんな感じだったので、新鮮というよりは懐かしい感じです。学生が勉強にのめりこむのは、こういう空間との出会いがきっかけになったりするものだと、私は思っています。足元の物理的空間の重要性を感じることができずに図書館情報学大学院を卒業し図書館運営に関わっていく学生がいるとすれば、それはなんだか悲しいですね。

(写真追加予定)

参考:
E871 - 米国を代表する図書館情報学大学院の図書館,施設の閉鎖を検討(CA-E)
http://current.ndl.go.jp/e871

2008/12/20

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[Private]ブログ改修メモ

Googleのカスタム検索を使って、レファレンス質問・回答や情報検索の手助けとなるマニュアル類を検索する検索ボックスを以前に作っていたので、追加してみました。

その他、いくつか追加してみました。

詳細はこちらから。


  • カスタム検索(レファレンス質問回答&マニュアル検索)
    主にレファレンス協同データベースを対象とする検索ボックスです。
    参考: レファレンス質問回答&マニュアル検索
     
  • カスタム検索(図書館情報学ニュース検索)
    主にカレントアウェアネスを対象とする検索ボックスです。
    参考: 図書館情報学ニュース検索
     
  • 図書館関係雑誌目次
    国立国会図書館が12月17日にはじめた雑誌記事索引の新着記事情報のRSS配信サービス。このうち図書館関係雑誌について、カレントアウェアネスポータルがRSSフィードを束ねて配信してくれているので、それをRSSフィードのウィジェットに追加してみました。
    参考:カレントアウェアネスポータル > 当サイトで集約している図書館関係雑誌目次RSS集の対象雑誌

  • Meebo
    Meeboは、2007年に日本語も通るようになったIMサービスですが、これを使うとMSN、Google Talk、Facebookなど大手のチャットサービスにまとめてログインしておくことができ、しかも端末にチャットソフトをインストールする必要がないので、米国のデジタルレファレンスでもよくつかわれています。このMeeboのウィジェットを追加してみました。私を知っている方も知らない方も気軽にメッセージをくださるとうれしいです。
    参考:Meebo

  • Latest Headline
    日本語だと3行目の文字がきれてしまいますね。
    参考: Hoctro's Place > "Latest Headlines" Widget

  • Related Posts
    各ポストの下に関連する記事を表示するウィジェットを追加しました。記事単位で表示すると、記事のフッターに関連する記事が表示されます。なかなかうまく動くのがなかったのですが、一応これで解決。
    参考: Blogger.com Related Posts Service

 
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ほとんどの中国人が政府によるインターネットの統制を肯定している

こっちの人と話していると、中国はネットが政府にコントロールされていてよくないという意見をよく聞きますが、情報学校にいる中国からの留学生に聞くと、「べつにいいんじゃない?」という反応がかえってくることが多いです。調査結果によると、実に80%以上の中国人がインターネットは管理・統制されるべきであると考えており、約85%が政府がその役割を負うべきと考えているとのことです。

この調査は、ニューヨークのマークル財団の資金により中国社会科学院が行ったもので、提供しているPew Internet & American Life Projectによると「中国の全ての世論調査と同様、この調査も調査対象者も政府に承認されなくてはならず、また西洋人が期待すると思われる検閲などのトピックについては調査されていない」ものの、「じっくり見ていくと中国人の、いくつかの慎重を期する問題に対する見方が明らかになってくる」ものとなっているそうです。
(As required of all public-opinion polling in China, either the survey or the surveyors must be approved by the government, and some topics that Westerners might have liked to see addressed directly, such as censorship, were not. But a close reading of the results and findings highlights the Chinese perspective on some sensitive issues.)

詳細はこちらから。

Most Chinese Say They Approve of Government Internet Control
http://www.pewinternet.org/PPF/r/246/report_display.asp
3/26/2008

「慎重を期する」らしいので一部を取り出すのもどうかという感じですし、しかも子どもの安全を守る話と、政府情報や言論の自由などの話が混在して語られているので、注意する必要はありますが・・・、でも取り出してみると。

まずネットに対する捉え方としては、

  • この4年でオンラインコンテンツを信頼できると思っている人は全体で52%から26%に減少している。ネットユーザは30%が信頼できるとし、非ユーザは18%が信頼できると回答している。
  • どのようなコンテンツが信頼できるかについては、政府からの情報が圧倒的に支持され、以下メディアからの情報(46%)、検索エンジンの結果(28%)、掲示板や広告(11%)、個人ウェブサイトからの情報(4%)、チャットの書き込み(3%)となっている。
  • 93%のネットユーザが、ネットコンテンツは子供には不適切と考えている。
  • ネット利用の悪影響として、中毒になる(61%)、ポルノ情報に影響される(61%)、悪友を作りやすい(43%)、個人的情報が危険にさらされる(42%)などとなっており、非ユーザほどこれらに対する懸念を強く持っている。

となっているそうです。

またそれに対する解決策については、

  • 84%がネットは統制・管理されるべきであると考えており、この数値はこの数年ほとんど変わっていない。ただしこれについてはネットに対するネガティブな報道の影響も考慮する必要がある。
  • 統制されるべきネットコンテンツとしては、ポルノ(87%)、暴力(86%)、スパムやジャンクメール(83%)、広告(66%)、個人に対する誹謗中傷(64%)、チャット(26%)などとなっている。政治(politics)に関する情報は2005年に8%から41%に増大している。
  • ネットの統制・管理に責任を担うべきなのは、政府(85%)、ネット関連会社(79%)、親(68%)、学校(64%)、ネットカフェ(59%)である。

となっているそうです。

これに続いて、なぜ中国人がネットに対して否定的な考え方を持っているのか、なぜ政府が統制するべきと考えているのかなどについて考察しています。報道の影響が大きいとみているようです。

全体的に中国の情報政策に否定的な論調なのは、米国の他のレポート変わりません。
 

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信用できる情報源は政府ウェブサイトよりも図書館である

ブッシュ政権下の”情報政策”の結末なのか、米国の政府ウェブサイトは鵜呑みにしてはいけないという認識が広く浸透しているようですが、一方で、図書館は最も信用できる情報源としての地位を築いています。図書館がこのような地位を確保している理由はなんなのか、考えてみる必要がありそうです。

詳細はこちらから。
 
The IMLS National Study on the Use of Libraries, Museums and the Internet
http://interconnectionsreport.org/



このグラフは、人々が意思決定や問題解決の際に、公的に情報を入手できる機関中どの機関がもっとも信用できる情報源であると考えているかを比較しています。もっとも信頼できる情報源を5とする5段階評価で、成人1716人の回答結果をまとめたものです。これによると、トップが図書館で、続いて博物館、文書館・歴史協会、系譜学会がランクインしています。政府ウェブサイトは大きく引き離されてこの下に位置し、バイアスや主観がはっきりと許容される商用サイトや個人サイトに近い値になってしまっています。

この調査では続いて、以下のようなことを明らかにしています。

  • 図書館や博物館の利用頻度と、それに対する信用について相関関係がある
    人々は図書館等が信用できるので活用し、活用している人ほどますます信用する傾向があるとのことです。
  • 図書館等の情報について、遠隔サービスを利用して入手した情報よりも、直接来館して入手した情報のほうをわずかに信用している
    実際の値は直接来館4.62に対し遠隔サービス4.48(図書館)なのでともに高い信頼を確保しています。
  • 図書館、博物館、インターネット情報の利用は相互にさらなる利用を刺激している
    人々はどれか1つの情報源に頼るのではなく、複数の情報源(人からの情報、本、新聞、雑誌、インターネット、テレビ)を組み合わせて使い、利用するメディアの数は平均2.4になるそうです。

  • インターネットは情報源であると同時に、他の情報源の利用を刺激する触媒として大きな働きをはたしている
    特に図書館や博物館は、インターネットの拡大後も来館利用が増加していますが、これはインターネットへの情報提供を通じて実現されているようです。


このリサーチからだけでははっきり結論づけることはできませんが、バイアスのない蔵書構築の追求、新聞・雑誌・デジタルメディア・インターネットなどの様々なメディアの提供などが、図書館の信用構築に寄与していることが、なんとなく推察されます。

信用(Trust)は情報源の活用の際に重要な要素ですが、日本の図書館の信用はどのような値でどのような理由によるのか、興味あるところです。

参考:
オンライン時代,図書館と博物館はどのように使われているか?
http://current.ndl.go.jp/e765