松林正己さんの「図書館はだれのものか」の第1章「最先端公共図書館の誕生:シアトル公共図書館新館」は、松林さんが米国国務省主催の米国図書館視察旅行に参加されたときのことをまとめられたものです。冒頭に引用されているWallace S. Landor氏の、"Nothing is pleasanter than exploring a library."(図書館探検以上に楽しいものがあろうか。)言葉どおり、松林さんが心から楽しんでシアトル公共図書館を探検されている様子がとても伝わってくる記事です。
拝読し、私も2年前の2006年にシアトル公共図書館を訪問したこと時のことを懐かしく思い出しました。私にとってシアトル公共図書館は、米国の公共図書館で初めて訪問した場所。奇抜な形をした透明なガラスの建物に最初はこれが図書館かと思わず声を発してしまいました。
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写真撮影
写真撮影に対して厳しい図書館に慣れてきたので、何もしらない私は、シアトル公共図書館でも写真撮影はダメだろうとおもっていました。でも、あまりにもすばらしい図書館で、それもめったにこれない外国の図書館なので一応聞いてみようと図書館員に「写真はとってもいい?」とおっかなびっくり聞くと、「もちろん!どんどん撮っていいわよ!」と過剰なまでの撮影歓迎の反応が帰ってきました。あまりにも気持ちよく快諾されてしまったので、ほかのフロアの図書館員にも尋ねていくと、どの図書館員も同じ反応でした。確かに館内を見学していると、ほかにもカメラを構えている人にちらほらと出会いました。3階の真っ赤なフロアでは、本格的な一眼レフを構えた人がいたのでたずねたところ、建築学を勉強しているという学生さんだとのこと。数々の建築賞を受賞している図書館だけに、図書館員だけではなく、建築学の人たちも多数撮影に訪れているようでした。
私はもちろん人の顔が映りこむような写真撮影には気を使っていたのですが、最上階でその学生さんがチェスをしている利用者が入るアングルで撮影していたところ、チェスの利用者が「ノー・フォト!ここで写真を撮るな!」とその学生さんを叱っていました。
1階の多言語資料サービスは圧倒的にすばらしいサービスで、ここも撮影をとおもい「カウンターの写真をとってもいい?」と図書館員にたずねると、「モデルが必要?僕でよければここに座っているよ。」と自らおっしゃってくれました。撮った写真を見せながらネットに掲載しても問題ないか聞くと、もちろんいいよとここでも快諾。館全体の方針なんですね。
原則撮影禁止・撮影するなら許可という方針にするのか、原則撮影可・撮影時には利用者のプライバシーに配慮するよう自己責任でという方針にするのか、米国の図書館でも方針は別れるようですが、シアトル公共図書館の開放的な方針は、とても印象的でした。
ホームレス対策
松林さんの本にも紹介されていますが、シアトル公共図書館の「ビジネス支援としてのホームレス対策」は話に聞いていたので、サービスとしての基調のようなものが掴めるかと注意を払っていました。もちろん身なりもなにも日本とは違うので、どの利用者がどうなのか、などという判断はなかなかできませんが、関係していそうなことはなんとなく観察することができました。
1階のゆったりとした閲覧コーナーに席をとり、1時間ほど、利用者と職員のやりとりを観察してみましたが、1時間の間にも、警備の人や図書館員が巡回してきて、寝ている方に声をかけていくのが見られました。
コンピュータのコーナーではトランプゲームなどをしているのが、目に入ってきました。また最上階のほか、何ヶ所かでチェスなどのゲームをしているのが目に入ってきました。
後に気づいたことを図書館員に確認したところ、図書館のサービスを使うということが重要で、使い方は自由なのでどのように使ってもらってもよいけれど、ただ眠りに来たりするだけなのは使うとは必ずしも言えないので、声をかけたりしているのだというような説明をいただきました。私も、過去のいろいろな体験から、なんでもいいからなにかをするということが大切だと信じているので、この図書館の方針はなにかとても賛同できるものでした。
シアトルの街も歩いていると、小銭を、タバコを、と言われることがよくありました。観光客も多い街なので、いかにも観光客の私には声をかけやすいのかもしれませんが、それにしても頻度が高かったのを覚えています。シアトルの街のほんの片端しか見ていないのですが、街の現状に立脚したサービスの追及について考えさせられた体験でした。
参考:
アメリカの図書館訪問記-シアトル公共図書館 (伊東直登)
http://book.geocities.jp/library_live/usalib-seattle-1.html
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