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2008/12/08

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情報を落とさない米国メディアの大統領選報道

渡辺将人さんの「見えないアメリカ」という新しい本。さすが米国社会の中に入りその政治を観察をしてきた人の著作であるだけに、いろいろと今まで見えなかったアメリカをわかりやすく解説してくれ、とても勉強になりました。

ただ、最新の本なのですが、現在の米国社会に対して今の私が感じていることと、多少の違いがあるのです。渡辺氏の執筆当時と今とのギャップからくるもの。この間にいったい何が変わったのでしょう。まだまだ謎だらけですが。

詳細はこちらから。

Transcript: 'This is your victory,' says Obama
http://edition.cnn.com/2008/POLITICS/11/04/obama.transcript/

上のリンクはいわずと知れたオバマ氏の大統領選の勝利演説のトランスクリプトと映像です。Videoのタブをクリックすると映像が見られます。この勝利演説だけでなく、討論会などの映像ももちろんみることができます。実はこれが、私の思う「見えないアメリカ」が、まだ見ていない部分です。

この本の第5章「メディア-大衆化の舞台装置-」では、政治と報道をめぐるシニシズム、ネットワークの凋落、国民的「儀式」の諸滅などから始まって、ジャーナリズムと党派言論をつなぐブログの登場にいたる、アメリカのメディアの変遷を報道記者らしく、日本に共通する現象をリズムよく解説してくれます。なるほど、と思うのですが、ここに、今回の選挙報道を通じて、メディアがオリジナルの映像をインターネットで配信し始めたことのインパクトは、まだ、出てきません。

メディアという存在、特に政治報道をするメディアは、オリジナルにあたれない人のために情報をプロの目線で切り取って必要な人に伝えてくれるありがたい存在です。忙しい市民は自分ではオリジナルなんてあたってられないですから、メディアに頼らざるをえません。しかし今回の選挙は、一般市民にとっても自分の未来まで決め兼ねないような選挙になり、みんな自分の一票を真剣に考え、確かな根拠を求めていました。多くの市民が、「偏りのない報道」という言葉の嘘を知っている世界では、むしろ自らのバイアスを認めはっきりと価値判断を示してくれる報道を多くの人が信用しますし、さらにその根拠を示してくれるほうをより信用します。渡辺氏の解説のように、ネットには政治ブロガーがたくさんいて、彼らがどんどん解説してくれる世界ですから、意図的バイアスの発見は容易です。

メディアはどんなにがんばっても、情報を落とさざるを得ません。1時間の講演を10分で伝えるためには50分の情報を落とさなくてはなりません。たとえ演説を忠実に伝えようと文字おこしをしたとしても、声に現れた抑揚などは伝わりません。オバマ氏の勝利演説の「United States of America」の部分も、それが「合衆国」というだけの意味ではなく、「United」を強調し、真の意味で統合されたものを目指そうというメッセージであることは、音声情報を落とした時点でつたわらなくなります。

この限界を超えて、演説の映像をそのままアーカイブし、できる限り多くの人がアクセスできるようにし、自己判断を、あるいは市民の判断を促す姿勢に舵をきった米国メディア。厳しい市民の批判の目にさらされる米国メディア。この情報を落とさない報道姿勢は広まっていくのでしょうか。
 

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