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2009/01/08

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ピッツバーグ大学図書館、検索システムにAquaBrowserを採用:試用レビュー

ピッツバーグ大学図書館の蔵書検索システムがAquaBrowserを採用した新システムへの移行を進めています。2009年春学期の期間はBeta版としての運用で、旧システムと比較しながら使うことができます。プレリリースした先学期半ばから、図書館情報学の学生たちには、この新旧システムを比較せよという課題があちこちの講義で出ています。学生たちは、「前のに比べたら、新システムのほう断然いい。」と一応結論づけるのですが、本音を聞くと、「どう利用者に教えていいのかわからない」など、ライブラリアンの卵たちのリアクションは微妙です。

詳細はこちらから。

PITTCat+
http://pittcatplus.pitt.edu/
(ピッツバーグ大学関係者でなくても使えます。)



Beta版PITTCat+は、最近リリースされたソーシャルネットワーキング機能などは導入されていないので、ベーシックなAquaBrowserの検索インターフェースです。上の画面は、ベタに"Public Library"と入れたときの結果画面です。中央カラムが検索結果で、左右に再検索を補助する機能があり、左カラムが”ワードクラウド”、右カラムが”ファセット”です。

中央カラムの検索結果は、Googleなどの検索システム同様、検索語との関連度に応じて上から表示します。さすが”Public Library”では、54,283件がヒットしています。結果の並べ替えも可能で、”Year”、”Title”、”Author”のアルファベット順で並び替えすることができます。

例えば、公共図書館に関する本の中でも、特に、「アンドリュー・カーネギーの米国の図書館にもたらした影響についての本が欲しい」とすると、この54283件の中から検索結果を絞り込んでいかなくてはならないわけですが、ここからいろいろなアプローチが考えられます。

例えば・・・

1)"Andrew Carnegie"という検索語を加える。これだけでもいろいろなバリエーションがあって、ダブルコーテーションをつけるとか、検索語を"Library"と"Carnegie"などのように減らすとか、いろいろすると検索結果も異なります。

2)左カラムから絞ることを考える。この絞込みは、黒字のAssociation(共起語)、赤字のSpelling Variation(スペルのバリエーション)、緑字のTranslation(同義語、翻訳語)で考えていきますが、今回のようなケースでは、どれもあまり意味がありません。こんな分野の本があるのかぁと眺める程度です。

3)右カラムのファセットから絞ることを考える。このファセットという言葉が一般にはわかりにくいですが、要は、いろいろな方法で検索結果を分けるということで、利用形態(書架にあるのか、オンラインで利用できるのか)、フォーマット(雑誌記事、本、オンライン資料、雑誌・新聞、ビデオ、マイクロ、etc)、主題(トピック、地域、期間、人物)、資料の言語(英語、日本語、中国語、etc)、などできっていくことができます。この場合は、アンドリュー・カーネギーとの関係なので、人物(Persons)を選んで、そこから名前を探していくと、最終的に12件が残ります。

ヒット件数との関係で、いろいろな手が使えるので、旧システムより頭を使うんじゃないか、という気がしますが、そこは利用者の自由を尊重するという考えなのだと思われます。利用者には学部生レベルもいれば修士課程、博士課程もいますし、もちろん教授陣もいます。検索語の選定から様々で、その後の思考回路も様々です。「みなさん、自由にやっていんですよ!」ということなのだと思います。

素人にはいいのかも。。。でも玄人には。。。


初心者には、視覚的にも楽しいし、わかりやすくていいでしょという説明で片付けていいのかもしれませんが、問題はその先、学位論文を執筆するレベルになった学生のニーズを満たすレベルになっているのか、という点です。これについては、先に導入したシカゴ大学が、その導入に先立ち学位論文執筆段階に入った博士課程の学生を対象にした調査を行っています。そのレポート"Utility of a faceted catalog for scholarly research"によると、英文学や言語学、音楽など12分野のうち9分野の院生が、従来のシステムでは見つけられなかった関係文献を見つけることができたというエビデンスが出ています。ただこのレポートは、院生に検索してもらってそれを観察しているだけで、被験者が実際どのような思考回路で検索していったのかなどについては深く掘り下げておらず、なんとなく導入推進派の調査結果のような印象がないわけではありません。


(From Utility of a faceted catalog for scholarly research)

このレポートの中でも報告されている、ファセットの主題やトピックのところがわかりにくいといった指摘は的を得ていますし、グラフィカルなワードクラウドもスペルチェックなどには役に立ちますが、使いこなすにはシステムの裏側をすこし把握する必要があるようにも思います。

検索結果ごとにRSSフィードを設置でき(画面右上)新着図書を把握できる、大学の電子図書館コンテンツも統合的に検索できる、といったメリットもあり、また今後、すでにリリースされている個人ポータル機能やソーシャルネットワーク機能などの追加の可能性もあるのですが、さてさて、実際使う学生、そしてそれを案内する図書館員の反応はどうなるのでしょう。
 
個人的には、クラスタリング技術が好きなので、それが統合されればなかなか良いシステムになるのではないかと思うのですが。

ピッツバーグ大学図書館からの報告が待たれるところです。

参考:
AquaBrowserに新たなコミュニケーション機能(カレントアウェアネス-R)
http://current.ndl.go.jp/node/8307
 

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